設備投資は盛り上がらず

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比5.6%と9四半期連続で増加したが、1-3月期の同7.3%から伸びが鈍化した。製造業(1-3月期:前年比6.4%→4-6月期:同11.6%)は伸びが加速したが、卸売・小売業(前年比▲2.5%)、不動産業(同▲7.8%)が減少に転じるなど、非製造業(1-3月期:前年比7.8%→4-6月期:同2.6%)の伸びが大きく鈍化した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比▲2.7%と4四半期ぶりの減少となった。製造業(1-3月期:前期比3.3%→4-6月期:同0.4%)はかろうじて増加を維持したが、非製造業(1-3月期:前期比7.5%→4-6月期:同▲4.4%%)が3四半期ぶりの減少となった。

機械受注統計が増加を続けていること、日銀短観、日本政策投資銀行などの設備投資計画が強めであったことなどから、設備投資は15年度に入って伸びを高めると予想していたが、今回の結果は期待はずれであった。

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移

企業収益が好調を続ける中で設備投資が伸び悩んでいるため、企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は50%台半ばの低水準で推移している。

また、15年度春闘では前年度を上回る賃上げが実現したにもかかわらず、15年4-6月期の人件費は前年比1.3%(1-3月期:同0.8%)とそれほど大きく高まっておらず、この結果労働分配率(当研究所による季節調整値)は58.9%と91年7-9月期以来の50%台まで低下した。企業収益が過去最高を更新する中でも企業の設備投資、人件費抑制姿勢は変わっていない。

設備投資とキャッシュフローの関係

なお、15年4-6月期の従業員数は前年比▲2.6%(1-3月期:同▲0.9%)の大幅減少となり、増加を続けている労働力調査、毎月勤労統計の雇用者数の動きとは大きく異なっている。法人企業統計はサンプル替えによって断層が生じることがあるため、四半期毎の計数は実態から乖離する可能性があることには留意が必要である。


4-6月期・GDP2次速報は下方修正を予測

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/8公表予定の15年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.5%(前期比年率▲2.0%)となり、1次速報の前期比▲0.4%(前期比年率▲1.6%)から下方修正されると予測する。

設備投資は前期比▲0.1%から同▲1.6%へと下方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比6.6%と9四半期連続で増加したが、1-3月期の同8.1%からは伸びが低下した。

当研究所でサンプル替えに伴う断層を調整したところ、前年比4%台となり公表値よりも伸びがさらに低くなった。金融保険業の設備投資は前年比28.4%(1-3月期:同▲34.4%)の大幅増加となったが、ウェイトが小さいため、本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。

2015年4-6月期GDP2次速報の予測

民間在庫は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されることにより、1次速報の前期比・寄与度0.1%から同0.2%へと上方修正されるだろう。

その他の需要項目では、6月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比2.6%から同3.0%へと若干上方修正されると予想する。

斎藤太郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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