政府の機密事項を私用メールで扱っていた内規違反などスキャンダルばかりが取り上げられる2016年大統領選の民主党最有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官(67)。絶対に誤りを認めない姿勢から有権者の好感度は下がる一方だが、一流エコノミストが練った経済政策を掲げていることは、あまり知られていない。大統領選が本格化する前に、その内容をおさらいしてみよう。


富裕層への課税強化など訴え 立案の中心はサマーズ元財務長官

「ヒラリーノミクス」の特徴は、長期的視野にもとづく経済活動の奨励と、労働者の権利強化による「中流層再興」だ。具体的には(1)富裕層への所得課税強化、(2)従業員持ち株制度の強化、(3)大胆な財政出動――などからなる。

立案の中心的存在は、1990年代に夫のビル・クリントン政権で経済政策に深く関与した著名エコノミストのローレンス・サマーズ元米財務長官であり、サマーズ氏自身が推進した、当時の規制撤廃・企業優遇政策からの方針転換である。

ヒラリー・クリントン氏は、株式譲渡益などに課されるキャピタルゲイン税率の改革を訴えている。その目的は、「企業の財産を売却させて配当益を絞り出し、短期間で四半期業績を向上させて、高値で売り抜ける投資家や、自社株を報酬として受け取り、同様の手法で利益を得る経営者に、高い税率を課すこと」(評論サイト「Vox」より)である。