(写真=スズキ)
スズキ <7269> と独フォルクスワーゲン(VW)の資本提携がついに解消された。国際商業会議所国際仲裁裁判所がスズキ側の要求を認めるかたちで決着。これによってフォルクスワーゲンが保有する19.9%の自社株をスズキが買い戻すことになり、総額は4,000億円以上になる見通しだ。フォルクスワーゲンがスズキの株を買った時の値段は2,200億円だったから、2倍もの出費となる。
4年にもわたって揉めに揉めた提携解消問題だったが、なにが原因だったのだろうか。
両社が包括的な提携関係を構築することで合意したのが2009年12月。スズキは、出遅れていたハイブリッド車、EV車、燃料電池車などの環境技術の取得を目指し、一方のフォルクスワーゲンは新興市場に向けた小型車の開発や供給を目指していたことから、両社の思惑が合致したのだった。
当時、両社の従業員と四輪車の販売台数(2008年度)はスズキが約5万人と230万台、フォルクスワーゲンは約37万人と630万台と大きな差があった。
提携後わずか1年で雲行きは怪しく
スズキがフォルクスワーゲンに「契約違反通告書」を送付したのは2011年10月だったが、それ以前に雲行きは怪しくなっていた。
技術的支援をしてくれない、対等なパートナー契約にもかかわらず新興国向けの小型車の開発で主導を握ろうとする。さらには、経営支配を強めようとする——。そんなフォルクスワーゲンの態度にスズキは早くから警戒していた。
フォルクスワーゲンにも言い分はある。スズキが2011年6月にフィアット・パワートレイン・テクノロジー社から、1.6リッターディーゼルエンジンの供給を受けたのは契約違反だというのだ。
互いに条件を提示して“お見合い結婚”したものの、相手は契約を履行せず、しかも自分を子分扱いする……。そんな状態に業を煮やしたスズキが三行半(みくだりはん)をつきつけた。長らく別居状態が続いていたが、今回ようやく離婚が成立したというわけだ。
スズキはGMとの提携では良好な関係を築いていた
自動車業界では、互いの弱いところを補完するために、資本や業務の面でグローバルに提携するのは珍しくない。
たとえばトヨタ自動車 <7203> は、今年5月にマツダ <7261> と包括的な業務提携を発表したばかりだし、富士重工業 <7270> や、ヤマハ発動機 <7272> とも業務提携をしている。また、ダイハツ工業 <7262> や日野自動車 <7205> は、業務提携したのち子会社化している。
かつてスズキは、1981年から2009年までの約28年間、米ゼネラルモーターズ(GM)と資本提携を結んでいたことがあった。このときは良い関係を築いていたが、GMの業績悪化で出資比率を引き下げ、さらに世界金融危機により資金繰りが深刻化、経営破綻したことから提携は解消された。