収益不動産
(写真=PIXTA)

創業200年以上の企業の数が最も多い国は日本だ。100年クラスの長寿企業の中には地方の酒蔵も多く含まれている。現在残っている酒蔵の多くは江戸時代末期から明治時代初期にかけて創業されたものが多く、企業規模も零細から中小といった規模が多い。これらの酒蔵は共通して不動産を多く有している。酒蔵は元々地元の名士が創業しているため、土地を多く持っていたということもあるが、日本酒の収益に加えて不動産賃貸業が酒蔵を長く支えてきたという側面もある。長いスパンで不動産の蓄財が企業を支えてきた典型的な例だ。そこで、今回は収益不動産の保有がもたらす貯蓄としての側面について、スポットを当ててみることにしよう。


不安定な業種でも100年もつ

話は酒蔵に戻るが、日本酒造りは冬場にしか出来ないという制約がある。以前は、農家の人達が冬場に杜氏として酒蔵へ出稼ぎに行き、酒造りをするという労働サイクルが多かった。そのため通年雇用を生み出せず、生産量も限定してしまっていた。だから酒蔵は経営効率を上げるのが難しく、大企業化しにくい業態なのだ。にもかかわらず100年以上続いている企業は多い。その理由が酒造経営を支える安定した不動産賃貸収入だ。


外部環境の変化のリスク

企業経営というのは、必ずしも自助努力だけで安定するものではない。例えばリーマンショックや東日本大震災のように、不可避の外部環境が原因で、一気に売上が落ちてしまう時がある。これはどの業種にも共通しており、企業は常に環境変化のリスクにさらされていると言える。近年は、「持たざる経営」や「選択と集中」ということで、本業以外の不動産賃貸業には手を出すべからずと言うような考えが主流になってきた。確かにこのようにリスクを取って収益を最大化する考え方は正しいともいえるが、一方でいざという時の備えについては弱いのも事実だ。


不動産は価値が下がる?

バブル以前は、不動産価格は上昇し続けていたため、現金よりも不動産を持っている方が良いとされていた。しかし現在は土地については値下がりもあり得ると誰もが理解しているし、建物についても経年と共に価値が下がることも認識されている。そのため価値が下がる不動産を持つことに対してネガティブに捉える人も多い。特にデフレ局面に入れば、不動産を手離す人はもっと増えるであろう。


不動産を持つメリットは何か

それでは、不動産を持つことのメリットはどこにあるのであろうか。それはやはり、「賃貸事業」という一つの事業が行える場を持っているということであろう。もちろん賃貸事業が成り立つという立地が前提だ。確かに不動産は現金と比べて年々価値が下がるかもしれないが、オペレーション次第では価値を維持していくことも可能だ。現金も株やFX等で増やすことも可能だが、難易度が高いことに加え、現金がゼロになってしまうリスクもある。一方で不動産賃貸事業の場合、株などの投資に比べれば難易度はそれほど高くない。仮に大地震などで建物が滅失したとしても土地は残るため資産がゼロになるということもない。企業が本業以外で事業をやるとすれば、株式やFXの投資業よりも不動産賃貸業の方がはるかに現実的であろう。


答えは100年企業の中にあり

ただし、不動産賃貸業と言うのは「長く、細く」と言うのが基本である。爆発的に大儲けできるものではない。借入で賃貸物件を一気に買いすぎた場合、かえって資金繰りを悪化させてしまう。あくまでも環境の激変に対する備えのレベルと言えるだろう。本業が急に売上が落ちても、不動産賃貸業の安定的な収益があれば、事業の立て直しを図ることができる。まさに不動産は企業にとって真の貯蓄と言えるではないだろうか。不動産を持つか持たざるべきか、その答えは100年企業の中にあるのかもしれない。(提供: Vortex online

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