中国の8月の輸出はドルベースで前年比-5.5%、輸入-13.8%、輸出入トータルでは-9.1%のさえない数字だった。中国海関総署(税関)が9月8日に発表したもので、7月に比べて輸出は2.4ポイント改善したものの、輸入は5.4ポイント悪化している。


信頼できるデータとできないデータ

黒字額は7月の430億2497万ドルから、8月は602億3580億ドルに拡大した。輸入の落ち込みによる貿易黒字の拡大は、普通に考えれば不況ということになる。1~8月の累計では、輸出-1.4%、輸入-14.5%、輸出入トータルでは-7.5%で、もはや貿易6%アップの目標は達成不可能だ。輸出入統計は、中国の経済データの中では、克強指数(電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資)と共に比較的信頼のおけるものだろう。密輸を別にすれば。

中国には信頼できないデータが多い。不確定要素が多く常識では判断が難しい。例えば、輸入の減少には原油価格の下落が影響している。そこで日・中石油大手の直近の決算を見てみると、日本のJXホールディングス <5020> は4~6月期四半期決算で、79%の減益、国際帝石 <1605> は同48%の減益。中国大手の中国石化化工は1月~6月期中間決算で22%の減益、中国石油天然ガスは同63%の減益である。同じような減益幅のように見える。


捕まった石油閥のボス自宅には1.9兆円の隠し財産

ところで中国では昨年末、石油閥のボス周永康前政治局常務委員が捕まった。彼の自宅では1兆9000億円に及ぶ隠し財産が見つかっている。主要な財源は石油大手2社を中心とした業界からの集金に違いない。こうした影響をどこまで排除した決算なのか、誰も知り得ない。普通の国ならこんな分析の必要などないが、人治が幅をきかす中国では、加味すべき対象のよう思える。

また直近の経済ニュースでは、8月のマネーサプライ(M2)が前年比13.3%の増加と報道され、アナリスト予想を0.1%上回った。ところがここは国営四大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行)で両替をしても偽札をつかまされる国である。中央銀行(中国人民銀行)のウェブサイトには、偽札に対する取り組みの進展状況が堂々と載っている。これももとより信頼に値するデータとは思えない。