「死ぬまでに売りたい」

◆管理した物件は売却したり、賃貸に出したり、リフォームしたりと、何か「活用」をサポートしていますか。

長期間空き家になって管理を依頼されるということは、不動産売却や有効活用できなかった、または、諦めた物件ということになります。そういった不動産は駅から距離があるなど、もともと需要が少ない立地で、地価も安く、建物は築30年から140年と古い。地方ではそのような物件が多いため、「いくらでもいいから死ぬまでに空き家を売却したい」という依頼が一番多いですね。

そのため監督官庁と相談の上「100円不動産」というプロジェクトを作り、1円、100円といった価格で、空き家を直接売買するお手伝いをしています。実際に「田舎暮らしをしてみたい」という問い合わせは多くあります。空き家を安く購入して自分なりにリフォームして住むような、田舎暮らしに憧れて実践される方の住居として活用されるのが最も多い空き家の活用方法です。

◆ただでもいいから譲りたいというニーズがあるわけですね。

富山県に限らず、地方で打ち捨てられたような空き家があるところはだいたいそのような状況かと思います。先祖から受け継いだ思い出のたくさんある空き家を売ろうとしても微々たる金額にしかならないと思えば、売却して少々のお金をもらうよりも、血縁関係のない他人でも空き家を次に使ってもらえることで、あの世でご先祖様に会った時に喜んでもらえるだろうという考えに至るようです。


「管理責任」の認識は低い

◆空き家を管理してほしいというニーズは今後増えてくると考えられるでしょうか。

"空き家管理"法が制定されたとか、社会問題としてメディアに取り上げられる社会背景もあるためでしょうか、実際に当法人での管理件数も増加傾向にあり、問い合わせはほぼ毎日あり、現にニーズは増えているのではないかと思います。

また、私たちのところにも活動について講演やセミナーをしてほしいという依頼も増えているところから想像すると、空き家管理サービスを手掛けたいという提供者側からも注目が高まっているように感じます。

◆難しいと感じること、課題だと感じることはありますか。

空き家は持ち主の生活の一部であったことから、空き家に関係する問題を解決するためには、建築、不動産以外にも、被服、装飾、農業など衣食住すべてにわたる広範な知識が必要である上に、専門知識が人として正しい方向に使われているかどうかという正しさも必要になる点は、組織や人としてバランスがとれていないと難しいと思います。

また、建物を維持管理することが所有者の責任であることは建築基準法や空き家対策法などの法令で明記されていますが、実際空き家のために費用を支払って管理するものだと認識している人、建物を管理するのは持ち主の責任として必要なコストであると認識される方はとても少ないように感じます。

NPO法人とやまホーム管理サービス 中山聡理事
【プロフィール】
富山県生まれ。東京大学医学部卒業。わくわく法人rea東海北陸不動産鑑定・建築スタジオ株式会社代表取締役。NPO法人とやまホーム管理サービス理事。著書に、『ビジネス図解 不動産のしくみがわかる本』(同文館出版DOBOOKS)などがある。(提供: リフォーム産業新聞 9月1日掲載)

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