あく抜け,東芝問題,FOMC,日経平均株価
(写真=PIXTA)

証券用語における「あく抜け」とは、悪材料が出るだけ出て、下げ続けていた株価が一段落し安定するという意味を持つ。

この言葉を国語辞典で引くと、1つ目の意味として「野菜などのあくが抜けること」、2つ目の意味として「洗練されていること。あかぬけ」が登場し、3つめに相場用語としてのあく抜けが登場するパターンが多い。

「あく抜け」という言葉が、相場の先行きを語る上で使われる場合は、この言葉を使う人の「相場が上がって欲しい」という主観的な願望を表していることが多い。一例を挙げれば、「米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決まれば相場はあく抜けに向かう」という使い方が該当する。

市場参加者が関心を持つイベントが通過すると、当面の懸念材料が消えるため、参加者が利益確定や損切りを済ませたり、新たに持ち高を膨らませたりするきっかけになると考えられることが多い。

したがって、売り方の手じまいにしろ、新規の買いにしろ、いずれにしても相場が上昇する要因になる、という見方も成り立つといえばいえないこともない。

そうは言っても、それで本当に相場が上がるかどうかは、実際にふたを開けてみなければ分からない。だから本来「あく抜け」は、相場が上がり始めてから過去形で使うのがふさわしい用語だろう。

あく抜けという言葉がもっとピタリとあてはまるのは、経営不安がささやかれていた大企業が倒産し、これ以上の悪材料は当面出なくなった局面だろう。

古い例になるが、2001年に流通大手マイカルの法的整理の方針が伝わった時は、金融機関の不良債権処理の進展への期待から日経平均株価は大きく上昇した。2000年前後は大手金融機関が抱える不良債権問題が巨額に膨らみ、そのことが日本経済低迷の主因だと捉える市場参加者が多かった。

ところが、このとき金融機関が貸した融資の焦げ付き(損失額)が確定し、マイカルに関して金融機関の損失がさらに膨らむ恐れはなくなった、つまり「あくが抜けた」と受け止められた。