相続イメージ
(写真=PIXTA)

今年7月、見慣れない言葉が突然新聞をにぎわせた。「遺言控除」である。これが実現すれば遺言に基づいて遺産を相続した場合には遺族の相続税負担を減らすことができるという。家族トラブルの回避につながる上、相続税負担を減らせるという、いわば一石二鳥の節税対策ともいえるこの「遺言控除」とはどのようなものなのか。また、ただでさえ遺言証書の作成件数は年々増加しているのに、なぜわざわざこのような制度の導入が検討されているのか。その理由を考えてみよう。


増える相続トラブル

「遺言控除」は自民党の「家族の絆を守る特命委員会」が新設を要望する方針を固めた。相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引き、残りの額に税率をかけて算出する。現在の基礎控除額は「3千万円+法定相続人の数×600万円」だ。遺言控除はこの基礎控除に上乗せする形で導入されることが予想される。現段階では控除額がどれだけになるのか、控除が受けられる遺言書の要件はどうなるのかなど具体的な内容は不明だ。

税収を犠牲にしてまでも、遺言控除を国策として推進していこうとする背景には相続に関するトラブルが増加していることがある。特に最近増えているのが共有不動産をめぐるトラブルであり、これが資産の有効活用を妨げることにつながっている。