(写真=PIXTA)
ホンダ <7267> が新型原付スクーター「ジョルノ」の生産を中国から日本の熊本製作所に移した。ホンダのような大手に限らず、中小の日系工場でも、日本生産回帰や東南アジアへの進出など中国生産縮小の動きが進行しつつある。特に人件費の安さを理由に進出した労働集約型や、中国国内での販売を考慮していない輸出専業型の場合は、撤退さえ選択肢に入れているだろう。
人件費の高騰 20年で約10倍
食料品、繊維製品など生活必需品の対日輸出に強い、山東省の最低賃金を見てみよう。この数値が初めて発表されたのは1994年。このとき月例の賃金はわずか170元だった。それが2015年3月の改定では1600元となった。20年で約10倍の上昇だ。
実際にはこの最低賃金で労働者を雇うことは難しい。外資系なら2000~3000元は必要だろう。上海、深センでは最低賃金が2000元の大台を初めて超えた。この間、日本市場はデフレが続いており、店頭販売価格はむしろ下落している。労働コスト的にはとっくに限界に達していたのだが、2012年まで続いていた円高が延命治療の役割を果たしていた。
しかし、アベノミクスによる急速な円安がこの生命維持装置を外した格好になり、東南アジアへの産地移動が急加速した。続いて日本回帰の動きも始まった。