税務署からつつかれる可能性が高くなる

マイナンバー制度の導入の目的はこれまでは縦割り行政によって正確に把握・関連付けがなされていなかった税務手続きと社会保険関係の手続きを機械的に紐付けすることで、徴収・還付・給付業務をスムーズに行うことである。つまり、これまで人の目と手で行われてきた税金や保険料の徴収業務を機械的に行うだけでなく、長年の行政機関の欠点とされてきた「縦割りによるコミュニケーション不足」を克服するのが狙いだ。

これによって、導入以前には住民税の徴収方法を「普通徴収」とすることで本業の会社にバレにくくなっていた副業が、マイナンバーで税金と社会保険を一括管理されるようになることで、副業を含めたトータルの年収が本業の会社に知られてしまう可能性は出てくる。これに関しては、マイナンバーよりも住民税の徴収方法のほうが深く影響しているので、「マイナンバーになったからバレてしまう」とは言い難いが、もし「給与所得者については一律特別徴収のみを適用する」といった税制改正が行われた場合は注意が必要だろう。

無申告に関しては、人の管理から機械による管理になることで「申告漏れ」がより発覚するようになるだろう。これまで運よく免れていた人もある日突然税務署から連絡が来てびっくりすることになるかもしれない。マイナンバーが影響するとすれば、本業の会社にバレるかどうかよりも、無申告で税務署からつつかれる可能性のほうが高いと言える。

副業がバレないようにするには

存在がなるべく漏れないケースとしては、「確定申告書の住民税の欄を普通徴収にする」以外に次のいずれかが考えられる。

(1)副業の会社が源泉徴収票や支払調書を提出しない場合
(2)引っ越しの手伝いなどで生じた一時的な謝礼程度のもの
(3)競馬などの一時的なギャンブルによる収入が年間50万円以下の場合

副業の収入が給与所得であって、源泉所得税が乙欄として計算されている場合、年間の支払額が50万円を超えると源泉徴収票が税務署に提出される。また、支払調書については、報酬については1年間の支払金額が5万円を超えた場合、不動産の賃貸などについては15万円を超えた場合に提出義務が発生する。それぞれの金額に満たない金額ならば、支払調書が送付されないので、マイナンバーが始まっても副業が本業の会社にバレる可能性は低いだろう。

無申告のリスク

まず「副業は自分から言わなければ税務署にも市区町村にもどうせ分からない」と思いこんでいる人が多いが、それは誤解だ。副業であっても所得はしっかり税務署にも市区町村にも報告されているし、課税もきちんとなされている。副業に対する住民税の課税のあるなしではなく、その徴収の仕方でバレるかバレないかが左右される。

マイナンバーが導入されることと副業が本業の会社にバレることの関連性はそれほど高くない。むしろ、バレるのを恐れて無申告であるほうがずっと問題である。無申告が税務署に知られたら、単純に本税だけでなく、無申告加算税や延滞税を払わなければならなくなるからだ。現時点でバレてないとしたら、それは単に運がいいだけだ。機械的にスピーディにチェックされるようになれば遅かれ早かれ無申告は見つかってしまう。これを機に、専門家に相談するなどして適正に申告することをオススメする。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。