「買い安心感」は、株式相場の上昇が続き、買っていれば必ずもうかるという安心感が広がる状態を指す用語である。また、業績の内容や株価指標からみて上値余地がありそうな銘柄に投資する場合にも「買い安心感がある」という表現をする。反対語は「売り安心感」で、景気悪化などで相場の地合いが悪化し、信用取引の売り方が安心して売りを出せる状態を意味する。


アベノミクス相場の買い安心感は一旦終了か

東京株式市場では、数年単位で投資を行う投資家にとって、買い安心感のある相場はいったん終了したようだ。2012年12月に第二次安倍政権が発足し、9000円前後で推移していた日経平均株価が上昇を始めてから、大台である2万円を超えるところまでが買い安心感のある相場だった。

上昇相場が続いている間は、「朝の取引前に銘柄をよく選んで信用買いしておけば、大引け後には自然ともうかっていた」といった成功話が流布ていた。個人投資家にとって、安倍政権が繰り出すアベノミクスの威力は大きいものだった。


中国ショック以来、安心して買えない情勢が続く

しかし、この夏の中国金融市場の混乱により潮目が変わり、世界的にリスクオフムードが広がると、日本株についても利益確定売りが出やすくなった。日経平均株価は下落し、変動率も高くなった。最近は押し目買いも入るため、1万7000円台半ばが下値のめどとして意識されている。しかし、気軽に投資を始めると簡単にヤケドを負いかねない地合いとなっている。

価格変動率が高くなったことで、買い安心感はごく短期的な話としてしか取り上げられなくなった。例えば、米ダウ工業株30種平均や上海総合指数が大幅高となると、「東京市場で安心感が広がり、買い注文が増えた」というふうに説明される。米ISM製造業景気指数など、主要な景気指標が良かった場合も同様だ。いずれも、長くて1日程度しか効き目が持たない好材料に過ぎず、本来の意味での買い安心感とは違うものだ。