かつて世界の工場と言われた中国は、経済発展により世界のマーケットの中枢と呼べる存在へと変貌している。中国国内での購買力向上はもちろん、日本では中国人観光客によるいわゆる「爆買い」客を取り込むのに躍起になるなど、今や中国なしの経済は考えられなくなっている。現に中国GDPは世界第2位となっている。
世界の工場、中国から東南アジアへ
ただ、購買力の向上と共に世界の工場という立場は失いつつある。人件費の高騰、尖閣諸島問題や反日デモなどの政治的リスク、人民元変動などの為替リスクを避け、2006年頃からベトナム、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、ラオスなどの東南アジア内陸部への生産シフトが加速している。背景としては東南アジア諸国の道路網整備、インフラの向上、低賃金、工業団地建設などがある。
一部にはマーケットである中国への輸送コストなどを考え留まる企業もあるものの、東南アジアへの生産シフトは確実に進行している。それに伴い、中国と東南アジアの関係にもまた、変化が生じてきている。
中国にもMade in 東南アジアが増加中?
中国で東南アジア製の製品が消費者の目に触れることはまだ限定的なようである。また、製造業の東南アジアへのシフト化について、中国ニュースサイト人民網は誇大報道と否定している。確かに中国で見かける東南アジア製品に目立つものは無く、せいぜいH&Mの商品がベトナム製になっているくらいである。中国の大手オークション・ショッピングサイトの陶宝(タオパオ)で取引されている商品も9割強は中国製品である。では東南アジア製品は本当に中国に流入していないのかと言えば、そうとも言い切れない。
東南アジアに進出している製造業は人海戦術を武器とした組立業務などの単純作業が多い。高度な技術を要するものは、タイのような古くから外資系企業が進出している地域で行う企業もある。よって、一部の部品や中間加工などは東南アジア製がじわじわ増えている可能性が高い。現に、容器製造を東南アジア企業へ製造委託している大手化粧品会社もある。東南アジアはいまや製造業の縁の下の力持ち的存在である。