インドネシア高速鉄道の日中受注競争では、中国案が採用された。「中国ではさぞ快哉を叫んでいるに違いない」と想像する向きもあろうが、実は日本に勝ったという高揚感などどこにもない。
中国ではほとんど報道されていない
報道自体、日本のニュース(菅官房長官の苦虫を噛み潰した表情)からの引用に過ぎない。中国側から発信されたのは、テレビでおなじみの、洪磊外交部報道官による、定例記者会見でのコメントだけである。まさにコメントにすぎず、会見記録はわずか2行半ほどだ。新聞の扱いもほんの申し訳程度だった。
外国ニュースの引用で周知するというケースは、中国ではまれなことではない。例えば吉林省延辺朝鮮族自治州では、腹をすかせた越境北朝鮮兵士による強盗殺人事件がたびたび起きている。
こういうとき中国では自らは何も発信されず、韓国ニュースからの引用などであっさり済ませることが多い。国境警備の不備など明らかになるとまずいことは、そっとしておくに限る。
すると今回の新幹線の件も「何か裏があるのでは?」と勘繰りたくなる。それはさておき、洪磊報道官の「われわれには高速鉄道の建設、運営の両面において豊富な経験がある」という発言には、ひっくり返った日本人が多いだろう。
中国高速鉄道の歴史は2007年から始まったばかりにすぎないのだ。ただし、建設の面では彼の言うことにも一理ある。それは建設スピードが列車そのものより高速で、能力が巨大なことだ。