運行よりも建設重視は変わらず 中国がこっそり提示した破格の条件

鉄道部は解体され、管理部門は交通運輸部の国家鉄路局に、運行部門は中国鉄道総公司に分割され、再スタートを切った。

しかし最初から、これまでの鉄道建設による負債処理は税制面で優遇され、今後の建設に関する新たな起債にも、政府の援助が約束されていた。運行より建設が優位の体質は何ら変わらなかった。もはや誰も鉄道建設という巨大なマシンを止められない。国策としてこのマシンを干上がらせるわけにはいかなくなっている。

国内での鉄道建設余地が狭まる中、海外へ打って出るしか途はない。そしてどうしてもインドネシアを翻意させるべく、破格の条件をこっそり提示した。融資の政府保証を求めないばかりか、鉄道とは関係ない無利子融資までおまけに付けた。

これでは中国ネットでも指摘されたように、受注ではなく経済援助である。それでも今後のアジア展開のシンボルとして、どうしても必要だった。こうした事の真相はあまり国民に深読みされては困る。そこで自らは何も発信せず、そっとしておくことにした。

日本ほど几帳面な運行システムは不要だった?

安全面から見れば、50年間乗客死者を出したことのない日本の新幹線と、すでに3桁の犠牲者を出している中国とでは最初から比較にならない。それはインドネシアもよく理解しているだろう。

ただ日本ほど几帳面な運行システムは必要ない、とは考えていたかもしれない。とにかく中国の鉄道建設マシンは、国民に知られないよう新たに別の土俵を作ってまで仕事を確保した。中国の鉄道業界は再びアンタッチャブルなブラックボックスに逆戻りしているようにも見える。(高野悠介、中国在住の貿易コンサルタント)