女性役員比率は高ければいいのか

女性役員の人数や男女比率の開示が2015年3月31日以降に終了する事業年度から義務化された。トヨタ自動車 <7203> の2015年3月期は役員18人のうち女性は1人、比率6%となっている。女性役員比率が比較的高い企業の一例として、ニチイ学館 <9792> が挙げられる。2015年3月期は役員20人のうち女性が5人で、比率25%となっている。

重要なのは役員比率が適切かということだ。無理に女性役員比率を上げたところで、適任でない者に下駄を履かせても企業のためにはならない。適切な役員就任なのか下駄人事かを見極める必要がある。

企業の風土や状況によって、すぐに女性を登用するのは難しい場合も多い。現に新日鐡住金 <5401> やJFEホールディングス <5411> の2015年3月期は女性役員ゼロで、重厚長大系メーカーは少ない印象である。

今後は採用に占める女性の比率の開示も義務化される予定だが、それら人材多様性が業績や株価と正の相関があるという明確な答えはまだ出ていないことに留意する必要がある。平均年収と平均勤続年収から見る働き易さや新陳代謝度合い、女性役員登用状況の適切さを見れば、長期的に成長していくかどうかの一端が分かるだろう。


会計基準の変更による業績変化に踊らされるな

企業経理においては「国際財務報告基準(IFRS)」が話題になっている。IFRSとは、各国それぞれが用いている会計基準を統一して企業活動の国際比較可能性を高めようというものだ。日本企業がこれを導入すると、貸借対照表や損益計算書が変わる。

例えば、売上高を計上するタイミングが従来より遅くなることや、従来の売上額と費用を相殺した純額がIFRS上の売上高となることによって、売上高が減少する可能性がある。そのほか、固定資産の減価償却基準やのれん償却、有価証券売却損益など、影響は多岐に渡る。これらの詳細はここでは割愛するが、IFRSによって決算数値が良化または悪化しても本質は変わっていないことを認識しておけば一時的な業績変化に踊らされずに済むだろう。

IFRSの本質は、経営管理の合理化や、海外同業他社との比較、海外での資金調達可能性向上、海外投資家への説明などのメリットである。導入には人的資源をはじめ相当のコストがかかる。それを承知の上でIFRSを導入したり、導入する年度を具体的に決定して開示したり(例えば、三浦工業 <6005> は2018年3月期第1四半期より適用と2015年に開示)するということは、それだけの人的資源があることと、合理化や海外事業展開、海外投資家への攻めの意欲の表れであり、評価できるだろう。