中国
(写真=Thinkstock/Getty Images)

世界の株式市場では、ひと頃に比べて中国経済への減速懸念が後退し、比較的底堅い展開が続いている。市場の一部では、中国問題は織り込み済みとの観測もあるが、かといって中国経済が早急に回復軌道を取り戻すと考えるのは時期尚早だ。そこで今回は、内外で屈指の中国ウォッチャーとして知られる日中産学官交流機構特別研究員の田中修氏に、これまでの「李克強総理の報告」から中国経済・社会の発展を阻む問題点を読み解いて頂いた。


中国の経済リスクは消えていない

現在の習近平指導部自身は、中国経済・社会の問題点をどのようにとらえているのであろうか。3月5日の全国人民代表大会において、李克強総理は、経済・社会が現在抱えている困難・試練について、次のように報告した。以下、李克強総理の報告からポイントを列挙し、筆者の解説を加えた。

【李克強報告のポイント①】
「投資の伸びが力を欠き、新たな消費のホットスポットが多くなく、国際市場は大きな好転がなく、安定成長の難度が増大し、一部分野でなおリスクの隠れた弊害が存在する。」

【筆者の解説】
都市固定資産投資は、2015年も減速が続いている。消費は安定しているが、力強さがない。また世界経済の回復が遅れていることにより、中国の輸出は2015年に入り、3月以降マイナス傾向が続いている。このように内需・外需ともに不振のため、安定成長の実現が困難となっているのである。

中国の主要な経済リスクは、①住宅市場の不振、②シャドーバンキングの拡大、③主要業種の過剰生産能力、④地方政府の債務の膨張……である。このうち、住宅市場は北京・上海・広州・深圳などの一線都市がやや持ち直したが、地方の三・四線都市の在庫は深刻である。

人民銀行の指導強化により、シャドーバンキングの膨張には一応の歯止めがかかったものの、企業の債務不履行・銀行の不良債権は増加傾向にある。地方政府の債務は、借換債の発行により問題を先送りしたものの、根本的な問題は解決されていない。主要業種の過剰生産能力の本格処理は、これからである。


小型・零細企業の資金調達難・コスト高が続く

【李克強報告のポイント②】
「工業産品価格が引き続き下落し、生産要素のコストが上昇し、小型・零細企業の資金調達難と資金調達コスト高の問題が際立ち、企業の生産経営の困難が増大している」

【筆者の解説】
2015年の工業生産者価格は、下落幅が拡大している。これは国際原油価格が下落した影響が大きいが、工業の不振による価格下落も原因の1つと指摘されている。また、小型・零細企業の資金調達難・コスト高は大きな問題となっており、このため小型・零細企業に的を絞った財政・金融政策が繰り返し発動されている。