ワクチン接種
(写真=PIXTA)

これから冬に向けてインフルエンザの流行期がやってくる。流行前の時期にワクチンの接種を済ませたいところだが、今季は、従来までと違う事態が起きている。


インフルエンザB型対応強化でワクチンの仕入れ価格が上昇

昨季までのワクチンはA型ウイルス2種とB型ウイルス1種(山形系統)の3種類に対応するタイプ(3価ワクチン)だった。

今季からは、インフルエンザB型への対応を強化するため、A型2種(昨季と同じ)、B型2種(山形系統およびビクトリア系統)の4種類に対応するタイプ(4価ワクチン)に改良されている。効果が期待される反面、ワクチンの仕入価格が上昇している。

予防接種は保険適用外で、各医療機関が費用を決めることになっているが、今季は値上げの動きが出ている。また、定期予防接種の対象者(65歳以上の高齢者など)がインフルエンザ予防接種を受ける場合、予防接種法に基づく市区町村の費用助成が受けられるが、自己負担額を値上げする自治体が相次いでいる。

体力の弱い高齢者や子どもを抱える世帯では、予防接種費用の高騰が家計に及ぼす影響が大きく、接種を敬遠するケースが増えるのではないかという懸念が上がっている。


鼻の穴に噴霧するワクチン「フルミスト」、国内未承認だが注目高まる

インフルエンザワクチンの値上げが指摘される中で、新しいタイプのワクチンへの期待が高まっている。その代表格が鼻の穴へ吹き付ける噴霧型のワクチン製剤(米国製品名:フルミスト)だ。

これは4種類のインフルエンザワクチン株を含有している。従来の注射と比較して予防接種を受ける側の負荷が小さく、日本で今季から導入される4価ワクチンと同等の効果が期待できることから、高い注目を集めている。

このワクチンの製造元は、英国アストラゼネカ傘下メディミューンで、2003年に米国で最初に承認され、その後欧州でも広く販売されている。日本国内では、同ワクチンの日本の小児・青少年を対象とする試験が2014〜2015年のインフルエンザ流行期に実施され、承認申請を準備中だ。

2015年9月には、アストラゼネカ英国本社が、同ワクチンの日本における開発・商業化に関する独占的ライセンスを第一三共 <4568> に供与する契約を締結したことを発表している。

現時点では厚生労働省の承認を受けていないため、医師自らの責任において輸入ワクチン製剤を使用することになる。公的医療保険は適用されず100%自己負担で、ワクチン注射よりも高額だ。また、輸入ワクチン製剤を使用して副反応が生じた場合は、医薬品副作用被害者救済制度が利用できない可能性があるなど注意が必要だ。