審査基準の違い

両者は審査の基準においても大きな違いがある。金融機関が審査で最も重視するのは貸した資金が確実に返済されることだ。住宅ローンであれば債務者の職業や勤務先が重視される。

一方の不動産投資ローンは債務者の収入といった属人性よりも、取得した物件の収益力が重視される。ローンの返済財源は賃料収入から経費を控除した金額だ。一般的に時間の経過とともに賃料は減少していくが20年、場合によっては30年という長期間にわたり返済財源を確保できるだけの高い競争力を持った不動産であることが求められる。

しかし物件の立地や周辺の環境、建物のメンテナンス状況により賃料の下落率は異なる。また、事業であるからには経費を考慮する必要があるが、これには固定資産税や火災保険料、賃貸物件のメンテナンス・保守管理費用などが含まれる。当然ながら事業であるからには利益に対し所得税が課される。

金融機関は不動産投資ローンの審査にあたり、賃料収入からこれらの支出を差し引いた上で融資を返済することが可能であるかを検証する。物件の競争力に応じ賃料の下落率やメンテナンスの費用を調整する。長期にわたる借入であれば金利の変動も考慮する必要がある。金利が上昇すれば当然返済額も増えるからだ。

このように、借入金返済期間中に返済不能に陥ることがないかをシミュレーションすることで、不動産投資の問題点が明白になる。事業開始直後は黒字であってもある時点では一時的に資金が不足するようなケースもある。その時までにどれだけの利益をストックしておく必要があるのかも明確になるだろう。

これは単に審査を通すためだけではなく、事業の問題点を把握し、改善策を講じるためにも必要なのである。

不動産投資ローンは住宅ローンよりも不利なのか

一般的には不動産投資ローンの借入条件は住宅ローンよりも厳しいと考えられる。あえて一般的にはとしたのには理由がある。

銀行など金融機関は以前にも増して不動産投資ローンの残高を伸ばすことに躍起になっている。金融機関同士の競争も激しく、金利などの条件も大きくディスカウントされることもある。ここで具体的な借入金利の比較を行うことは現実的ではないほどに、金融機関のホームページや店頭に掲示されている金利が形骸化しているので、実際の融資条件については金融機関に直接問い合わせることをおすすめしたい。必ずしも不動産投資ローンの融資条件が住宅ローンのそれと比較し著しく見劣りするということはもはやないはずだ。

それでも、住宅ローンで賃貸物件を取得したいという誘惑に駆られることもあるはずだ。最近の金融機関の融資姿勢はコンプライアンスが重視されており、目的外の融資は厳格にチェックされる。住宅ローン控除を受けながら、住居を賃貸し賃料収入を得ることを考える猛者もいるが、当然ながら違法行為であり認められない。それぞれの特徴を正しく理解し、正しく利用する必要がある。 (ZUU online 編集部)