不動産は「資産」ではなく「ユーティリティー」

またこうした状況が継続するという世間の風潮を“心配の種”とし、住宅不足だったにも関わらず価格が40%も下落した1997年の香港を例にあげている。

現在香港とシンガポールでは「賃貸目的で購入される物件への借入額は最高50%まで」「海外購入には15%の印紙税が課される」など、不動産市場を安定させるためのマクロ・プルーデンス政策が発達しており、不動産を資産ではなくユーティリティーと見なす傾向が強まっている。

不動産担保貸付を「業務安定の要」と見なしているイギリス銀行が、香港とシンガポールと同じ方向に舵を切り替えても、決して不思議ではないだろう。

若い世代の人気取りが目的の政治介入

政治的策略もマハタリ氏の土地バブル崩壊説を裏付ける重要な要因となっている。英政府にとって住宅難に苦しんでいる世代(25~34歳)への人気取りが、次の選挙結果を大きく左右することは明白だ。

14年前と比較するとこの世代の住宅所有率は40%まで減少しており、保守党は既に賃貸目的で物件を所有あるいは購入する大家にとっては不利なかたちで税制改革を行うなど、具体的に大きな動きを出している。

こうした動きは、手頃な価格の住宅を渇望する若い世代と、現在の高騰価格を死守したい高齢世代のギャップをさらに広げる結果になると予測される。マハタリ氏は「政治の介入によって住宅価格を安定、または引き下げる時期に到達しているのかも知れない」と述べ、今後さらに大きな改革が起ることを期待している。(ZUU online 編集部)