債券神話が崩れても、長期投資家は平気

「これから10年ぐらいのスパンで考えてください。(公的)年金の資産は、6年前からキャッシュアウトになっています。さらにこれから高齢化で、積立よりも貰う人が多くなるから段々下がってくる。1970年代から積み上がってきた年金資産の運用が厳しくなってくるはずです。これまでの運用スタイルも変えざるを得ないから、運用側の真の実力が問われるんです。これまでは、好環境に乗っかってきただけ。それにいま、機関投資家は短期運用しかできない環境にある」

「国債も危ないんです。いつかは供給過剰で値が下がるだろうし、売られるはず。それに市場金利が急上昇したら政策でコントロールするのは無理。インフレ率2%が達成されたら国債は暴落するにきまっている。債券神話は崩れるだろう。損するに決まっているからね。今の金利は信じられないぐらい低すぎる。昔は金利は上がっていた時期もあった。でも、ここ33年間金利はずっと下がっているから運用者はそういう良い時期しか知らない人ばかりなんです」

「先進国を中心にどこも国債を発行しまくっている。アメリカの出口戦略は、実はものすごい堅実。バブルになったら危ないから、できるだけ早く吸収しようとしている。短期的には厳しいかもしれないけれど、長期的には好ましい健全な行動なんです。でも、これができるのはアメリカだけ。インデックスファンドも気をつけたほうがいいでしょう。厳しいことも起きるかもしれない。でも、国債が暴落しても長期投資家は平気なんです。売った債券で積み上がったマネーは株式市場に回ってくる」

「だから、なにがあっても頑張れる会社を買っておくのが一番安全なんです。長期的には株価があがるから。ここしばらくは『玉石混交』というか『玉石石石』という展開ですが、ちゃんと選んだ者が勝ちなんです。アクティブ運用はインデックス運用に勝てないという話もあるけれど、株式投資はもともと個別企業の投資だから、丁寧に選んで買っておく。企業選別はものすごく大事なんです」

2つの「さわかみ流」銘柄選択

「長期投資家の銘柄選択方法はおおまかに2つあります。まずは、夕食を食べてお風呂に入り、さっぱりとした気分で、食卓に裏紙を出して、黒と赤と青のペンを用意しましょう。穏やかな気持ちで、毎日の生活で関わっている企業を思いつく限りリストアップしてください。それらの企業を感じるままに、(先ほどの話を踏まえて)青っぽいか、赤っぽいか、それとも黒っぽいか薄くマーキングする。この作業を月に1回、半年間続けてください。そうすると段々と企業の色がわかってくる。しっかり赤になった企業が応援銘柄なんです」

「もう一つは、10年、20年先の住みたい社会をイメージしてください。例えば、電力問題。これから10年先も放射線廃棄物を生み出すような電源が欲しいでしょうか?」

「家庭用の燃料電池がこれからは凄いことになるでしょう。去年の4月には200万円、あと3年で100万円は切るでしょう。もっと安くなる目処もすでに立っています。原材料に値段の高いプラチナではなくて、それ以外の素材が使えるようになってきた。家庭用の電気が燃料電池で発電できるようになれば、一気に普及して図式が変わる」

「送電なんか分散電源になるからもっと安定する。核融合も20年以内に実現するかもしれない。そういう研究をしている会社はいっぱいある。自分の問題意識を持っているテーマをトコトン研究してください。さわかみファンドもリサーチに命をかけています。企業リサーチをトコトンやるのは長期投資家なんです。長期投資の本質は難しい話は抜きに、『心から応援する』、それだけなんです」(ZUU online 編集部)