中国では昨年住宅価格が急落し、各メディアでは住宅バブル崩壊を危惧する報道がなされた。現在、同国の住宅価格は一線都市で上昇する一方で、ゴーストタウンが目立つ三線都市で下落するなど不透明感を強めている。こうした状況を中国ウォッチャーはどのように見ているのだろうか。在中国日本国大使館の経済部で1等書記官・参事官としての勤務経験を持つ、日中産学官交流機構・特別研究員の田中修氏に最新の中国住宅価格の動向を解説して頂いた。


住宅価格は都市ごとの分化が進む

2014年には住宅価格が急落し、「中国の住宅バブルは崩壊か」と一時騒ぎとなった。では、足元の住宅価格の動向はどうであろうか。

9月の全国70大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比21都市が低下(8月は26)し、10都市が同水準(8月は9)であった。上昇は39であり(8月は35)、最下落は贛州(かんしゅう)の-0.7%(8月は牡丹江-0.5%)、最上昇は深圳(しんせん)4.0%(8月は深圳5.2%)となっている。

これについて、国家統計局都市司の劉建偉高級統計師は、「中古住宅価格が前月比上昇した都市は前月より4減り、横ばいが2増えた。70都市の新築・中古の前月比上昇率は、総合平均でみると、それぞれ0.1ポイント・0.2ポイント縮小した。都市別では、一線都市の住宅価格は前月比で引き続き上昇しているが、上昇率は徐々に反落している。絶対多数の二線都市の住宅価格は前月比で小幅上昇か同水準であり、少数の三線都市の住宅価格は前月比で下落から上昇に転じた」と説明している。

前年同月比では、価格が下落したのは58都市(8月は61)であった。同水準は0(8月は0)、上昇は12(8月は9)である。最下落は湛江-7.4%(8月は丹東-8.7%)、最上昇は深圳38.3%(8月は深圳31.8%)となっている。


人民銀行の制限緩和が住宅買い換えを促進

これについて、劉建偉高級統計師は、「9月の中古住宅価格が前年同期比で上昇した都市は15であり、前月より8増えた。前年同期比の上昇率が縮小した都市は、新築が58、中古が53である。総合平均の上昇率では、8月より新築が1.9ポイント、中古が1.7ポイント拡大した。都市でみると分化傾向が継続しており、一線都市の新築・中古の平均上昇率は相対的にかなり大きく、二線都市はまだら模様であり、三線都市の新築は依然全部下落している」と指摘している。

また、1-9月期の分譲建物販売面積は前年同期比7.5%増(1-3月期は-9.2%)であった。うち、分譲住宅販売面積は8.2%増(1-3月期は-9.8%)である。1-9月期の分譲建物販売額は前年同期比15.3%増(1-3月期は-9.3%)であった。うち、分譲住宅販売額は18.2%増(1-3月期は-9.1%)である。

そもそも住宅価格が回復に転じたのは、昨年10月である。国慶節休暇を前に人民銀行は住宅ローンの要件を大幅に緩和した。これまでは、2軒目の住宅購入は投機とみなされ、厳しい制限が課されていた。しかし、今住んでいる住宅が手狭になり、それを売却してローンを返済し、新しい住宅を購入する場合には1軒目の購入とされ、頭金や金利の要件が大幅に緩和されたのである。