一線都市の上昇率は次第に縮小

このため、10月の休暇があけると北京・上海・広州・深圳といったいわゆる一線都市で、住宅の住み替え需要が一気に顕在化し、中古市場を中心に住宅価格は前月比で上昇に転じたのである。これを受け、前年同期比でも住宅価格がプラスとなる都市が次第に増加し、今年1-3月期までマイナスであった分譲住宅の販売面積と販売額も、現在は大幅なプラスになっている。住宅バブル全面崩壊の危機は回避された。

しかし、これは住宅バブルの再燃ではない。劉建偉高級統計師も指摘するように、上昇しているのは一線都市であり、ゴーストタウンが目立つ地方の三線都市のディベロッパーは大量の住宅在庫を抱え、住宅価格はまだ下がり続けているのである。

このため、不動産開発投資の前年同期比も、1-7月期4.3%→1-8月期3.5%→1-9月期2.6%と低下傾向が続いている。現在進んでいるのは在庫の消化であり、新規の住宅建設ブームが起こっているわけではない。すでに、一線都市の住宅価格の上昇率は次第に縮小しており、世界経済危機が発生した2009-2010年当時のように、人民銀行が不正常な大幅金融緩和策を発動しなければ、住宅バブルが本格化することはないであろう。

【筆者略歴】田中修(たなか・おさむ) 日中産学官交流機構 特別研究員
1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月〜9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。2014年4月から中国塾を主宰。学術博士(東京大学)。近著に「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)、「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)、ほか著書多数。

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