国連は2年ごとに世界人口の長期予測を行っているが、この8月、その2015年版が発表された。2100年までの国別総人口や、男女年齢構成を予測している。これが示唆する21世紀末にかけての世界の変化は現時点での我々の「世界観」に大きな修正を迫るものだ。

国内でも、国立社会保障・人口問題研究所(以降「人口研」)の将来推計人口が改定されるたびに、少子高齢化や少子化対策をめぐる議論が深刻なトーンで繰り返されるが、実のところ、その多くは「井の中の蛙」的な閉鎖系の論理と言わねばならない。そこには、人口変動が想像をはるかに超えるグローバル・イシューだという認識が欠けているからだ。

以下では、「世界の人口変動」、「日本の人口政策」の2回に分けて、長期かつグローバルな視野から現在の人口問題を見直してみよう。


国連の世界人口予測が示唆する21世紀人類の課題

10年~100年先の将来を予言する人口予測がどこまで信用できるのか?実際のところ、人口予測は、既知の人口ストックをベースに、年齢別の予想死亡率や出産確率を掛けて、翌年の人口を求めてゆくという比較的シンプルな機械的「積算」のシステムだ。その信頼性を左右するのは主として「死亡率」や「出生率」の想定となる。このため国連にも人口研にも見られる通り、「高位予測」、「中位予測」、「低位予測」など幅のある「シナリオ予測」の形をとることが多い。

ただ、人間はいったん誕生すれば金持ちも貧乏人も平等に毎年1歳ずつ歳を取ってゆく。結婚、出産、死亡と言ったイベントの発生確率も平均的にはかなり安定的でゆっくりとしか変化しない。したがって大筋としての方向性に関する限り、人口推計は、株価予測や経済予測に比べてはるかに信頼のおける物差しとみる向きが多い。

さて、世界の人口構造はこれからどんな方向への変貌を遂げるのか。国連の2015版予測の最重要ポイントを挙げ、そのインプリケーションを指摘しよう。


深刻化続ける古典的「人口爆発」

まず第一の注目点として、現在約73億人を数える世界の総人口は2050年までに97億人、2100年には112億人に達することが挙げられる。これは最も標準的な「中位予測」の数値だが、2050年の世界人口が94億人から100億人の範囲にある確率は80%とされている。

古典的な「人口爆発」問題がさらに深刻化する恐れを示唆する数字と言えよう。食料・エネルギーの不足と地球温暖化など環境の破壊に対して、技術進歩や国際的協調による対応がどこまで可能なのかどうか、大きな試練が待っていると見なければならない。