全銀システムは2018年にようやく24時間化
店内・行内為替の24時間化は個別行の努力で実現可能だが、他行為替の時間延長には業界全体の取り組みを要する。他行為替は、全銀システム(全国銀行データ通信システム)を用いた為替データの送受信と日銀の当座預金口座の振替により完了するからだ。
たとえばA銀行に口座を持つ甲が、B銀行の乙名義口座へ送金する場合、全銀システムを介しそのデータがA銀行からB銀行へ送信される。
A銀行はデータ送信とともに甲の口座から資金を引落し、B銀行ではデータ受信直後に乙の口座へ資金を振り込む。A銀行とB銀行間のでは、全銀システムを介し行った為替取引に伴う資金決済を日銀の当座預金口座間の振替により行っている。
現在、1億円以上の取引は即時決済し、その他の小口分は全ての銀行間取引の決済尻(資金受払の差額)を1日1回まとめて決済している。
取引構造はこうなっているため、銀行業界全体で決済サービスの24時間化を実現するためには、全銀システム、日銀ネットの改修と運用体制の整備が必要となる。各行の資金繰り破綻を防止するために、何れ短期金融市場や国債市場(貸借取引)の取引慣行の見直しも必要になるだろう。
2014年12月に全銀システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、平日夕方〜夜間、土日祝日の為替取引ニーズに応えるため、現行システムと別の“新プラットフォーム”を構築し、2018年中に24 時間稼働を目指すと公表した。
一方、日銀ネットについては、24時間化に対する正式な発表は行われていない。2016年2月には午後9時まで稼働時間を延長するが、それ以降のスケジュールは不明だ。このため、全銀システムの24時間化が実現しても、深夜・休日の為替取引はすぐに活発化しないかもしれない。
FinTechが決済サービスの24時間化を促進するカギ
全銀システムの新プラットフォームへの接続時間は、各加盟金融機関が独自に決定することになっている。おそらく大半の信金、信組、労金、農協および一部の地銀・第2地銀は、預金者数もあまり多くないため、当面の間、接続を見送るだろう。
一方、新プラットフォームへの常時接続を前提とする大手銀行、大規模地銀、ネット系銀行等の場合、FinTechに取り組む一般企業との提携が為替需要を掘り起こすカギになる。
CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)、電子マネー(ポイント・サービス)、Eコマース、テレビ・ショッピングなど銀行の資金決済業務と密接なサービスを展開する企業と連携することが重要になるだろう。
消費者が購入した商品の代金をネット・バンキングで即時支払えば振込手数料を無料にするとかポイント還元を受けられるとか、消費者・企業(預金者)の得する仕組み作りが大切だ。 (ZUU online 編集部)