2000年代以降、アパート・マンションの賃貸・分譲物件は、まずインターネットで探すことが常識になっている。それは物件を探す側だけでなく、運営する側にも言える。最近は、アパート経営者の募集、物件戦略の相談、リーシング情報の報告などをネット上で行うビジネスも拡大してきている。

たとえば12月3日に上場予定のインベスターズクラウド <1435> が提供しているのがアパート経営オンラインプラットフォーム「TATERU」だ。まずはアパートを建てる(TATE)ることと、さらには、家賃収入を得る(ERU)を一つにした言葉。ネット上でアパートを建てる候補地を紹介し、デザインアパートの提案、建築、賃貸管理を提供。オンラインですべてに対応できるのが最大の特徴だ。会員登録することで、アプリやウェブサイトを介してアパート経営の目標や資金計画などを相談できることに加えて、土地の候補物件や金融機関なども紹介してもらえる。こうした多くの情報連絡や手続きをオンラインで処理できるため、平日の昼間に時間をとる必要性がほとんどない。

また一般的にアパート経営者を募るビジネスでは不動産業者が仕入れた土地を経営者へ転売することになるが、「TATERU」では売出物件の橋渡しに徹することにより、アパート経営者にとっては取得コストを削減できるようになるとみられている。

土地情報は全国10都市の約1万2000社の不動産業者から提供されるもので、いずれも最寄駅から徒歩15分以内の非公開物件だという。建設するアパートの建屋についても、入居率を高められるようなデザイン案を提案して、着工する段には地方自治体への建築確認申請や、建設会社への発注代行などのサービスも行われるなど、アパートの所有者には細かい支援を受けられるというメリットもあるという。

「IT×不動産」で不動産業の構造は変わるのか?

アパート経営者を支援するだけではなく、「TATERU」のような「IT×不動産」のサービスが拡大してくれば、不動産業界の構造そのものを書き換える可能性もあることが注目されている。ヤフー <4689> とソニー <6758> が共同でマンションの価格などを公開するプラットフォームを準備するなど動き出している。

IT化・ネット化は、単に不動産業者と入居者・購入者間のコミュニケーションの省力化や円滑化に資するだけでなく、不動産市場の構造変化を促す面もある。実地調査をせずに不動産を購入するオーナーはほとんどいなかったが、今では物件の外観、室内、設計図、間取り図、公図、登記事項、周辺環境、再開発計画、賃料相場など多くの情報をネットにより入手できるほか、ビッグデータを活用した高度かつ精緻な市場分析結果も得られる。

このため、東京の投資家が地方の物件を直接見ずに不動産業者を通じ入手した情報に基づき購入したり、リノベーション工事の発注や入居者決定などをネット上のやりとりで済ませたりすることが一般化するとみられる。このような不動産にかかわる多様な人たちのコミュニケーションコストの大幅な低減により、市場の効率化、活性化が促進されるだろう。(ZUU online 編集部)