国内年金が、物流施設に投資する場合、上場リート、私募ファンド/私募リートの形態が想定される。

昨今、企業年金の関心が高まり、投資も増えてきている私募リートの場合、複数の用途を投資対象としている複合型13銘柄のうち、4銘柄が物流施設を投資対象に含むとしており(将来組み入れ予定とするなどの銘柄も他に2つある)、物流特化型も2銘柄が運用されている(ⅱ)。

特定企業向けの物流施設を対象にした銘柄(ⅲ)も、2016年の運用開始に向けて準備中という。従来型の私募ファンドの形態でも、これまで物流特化ファンドが組成されてきた。年金による物流不動産投資は、こうしたリートやファンドを経由した形で浸透してきている。

Jリート2

一方、海外の大型年金や政府系基金などは、直接投資に近い共同投資の形態で、開発中や賃貸稼働中の物流施設に投資するケースが多く見られる。国内に所在する物流施設に対しても、カナダ国民年金(CPPIB)がシンガポールの上場物流開発会社をパートナーとして開発投資を行っている。

このような共同投資の形態は、投資額が大きいこと、物流施設投資の知見を持つ人員が投資家の側に求められることなどから、小規模な日本の企業年金では難しい。

運用資産規模の大きい公的年金や共済組合などについては、今後は不動産を含むオルタナティブ投資を行う方向性もあり、内部人員やコンサルタントを確保することで、こうした共同投資をすることも想定される。

近代的な物流施設は恒常的に不足しているとされ、2015年も首都圏を中心に大量の新規供給が見込まれているが、これまでのところ、力強い需要により空室率の上昇は抑えられている。

顕在化しつつある課題として、近代的物流施設では施設内での作業を前提としていることから、郊外型商業施設などと競合する人材確保がある。投資にあたっては働き手に配慮した質の高い施設を選別することも求められるだろう。

(i)住宅、ホテルもオフィスとの利回りスプレッドが縮小してきている。固有の要因もあるが、関連データの蓄積などは
共通の要因といえる。
(ⅱ)複合型では、野村不動産、三菱商事、三井不動産、東急不動産の系列私募リートが物流施設を対象としている。物流特化型は佐川急便とザイマックスの合弁会社、物流会社センコーが組成した私募リートが運用中。
(ⅲ)大和ハウス工業がユニクロ向けに開発した物流施設を対象とした私募リート。

加藤えり子
ニッセイ基礎研究所 金融研究部

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