一般社団法人日本ペットフード協会の調査によると、2014年度の全国の飼育数は犬猫合計で2030万5000頭にのぼる。ペットは多くの家庭で家族の一員として愛情とお金を注がれる存在でもあるが、少子高齢化が進行している我が国において成長産業の一つと期待されている。ちなみに、矢野経済研究所「ペットビジネスに関する結果調査2014」によると、2013年度のペット関連市場の規模は小売金額ベースで1兆4000億円に達する。犬や猫にかかわらず、多くの人々が、ペットの存在とふれあいにより癒され、生活を充実させることができているのであろう。

ペットビジネスの裏で悲しい事件も

しかし、ペット人気の裏では様々なトラブルが身を潜めている。その顕著な例が、悪質ブリーダーの問題だ。ペットの流通経路は複雑であり、さらに業者の運営体制については法律によって厳格に定められていないため、なかには血統書を偽って市場に子犬を出し、いわば動物虐待といえる生育環境で無理な繁殖を繰り返している悪徳ブリーダーが存在している。

どこからか親となる犬猫を盗んできて檻に閉じ込め、出産を繰り返させて、生まれた子供たちを商品として売りさばき、親たちは繁殖不可能状態や病気になったら殺処分するケースがある。

2014年11月には栃木県で、河原や山林に合計70匹あまりの犬猫の死がいが捨てられていた、という衝撃的な事件が起こった。発見された犬たちは毛玉がひどく爪も伸び放題、雌犬は数回の出産の痕跡があったことから、悪質ブリーダーによる繁殖犬遺棄として捜査が進められ、悪質ブリーダーの関係者が逮捕された。繁殖引退犬の管理が悪く、輸送途中にほとんどの犬が死んでしまったために困って遺棄した、ということであった。その後、群馬県や佐賀県でも悪質ブリーダーが絡んでいると思われる犬の大量遺棄が発生している。