一口に「ビハインドを克服する」と言っても、決して容易ではありません。企業の世界もそれは同様のようです。が“後塵”に手をこまねいていては、差は広がる一方。といって先行する(大手)企業の戦略を後追い・真似していたのでは、所詮「二番煎じ」の域に止まり、真の成長は望み薄です。あらためて言うまでもないとは思いますが、ビハインド攻略法に、差別化戦略が一法として指摘されます。しかしこれまた簡単ではないようですが・・・


ビハインド克服のちょっとした工夫

幾多の企業の歴史を振り返っていくと“ほんのちょっとした工夫”で、後発組にもかかわらず、あっという間にNO.1企業に躍り出てしまったケースもあります。ふた昔も前の話ですが、示唆的な事由があります。

大衆目薬で首位のロート製薬が実践したビハインド攻略法です。同社の創業は1899年。胃腸薬など大衆薬品の販売会社としてスタートしています。そんな同社が大衆目薬の製販メーカーとして乗り出したのは、1909年。先発メーカーが多々ありました。しかしロート製薬は、市場参入から極々短時間で首位の座を得てしまったのです。


両口式点眼瓶

新成分を加味した新製品で、市場に参入したわけではありません。従来の市販目薬は薬瓶に綿棒を差し込み、薬液を滲みこませて点眼するというものでした。「手間がかかるし、衛生的にも問題がある」と考えた同社は、ビハインドを埋める策とし“両口式点眼瓶”を開発し、市場に乗り込んだのです。要するに、薬瓶とスポイトを合体させた“だけ”の代物です。 このちょっとした工夫が、100余年のロート製薬の礎を固めたのです。


駐車場業界後発組の異色戦略

いまや街角の風景と化した感がする存在に、コイン駐車場があります。「パーク24」や「日本駐車場開発」などが、業界大手に君臨しています。パーク24は設立後24年が経ちます。対してここで紹介するパラカは、業務展開後17年目、文字通りの後発企業です。がこの後発企業がいま、にわかに注目を集め始めています。

引き金は、過去1年間の株価のパフォーマンスです。10月期決算のパーク24を昨年11月の初値(1,365円)で100株購入したとします。そして今年10月末までの投資効果はというと、値上がり益+受取配当金で、45%のパフォーマンスとなっています。十分すぎる投資成果といえます。 ではパラカの場合はどうか、です。

同社の昨年11月の初値は10万4,000円でした(単元株1株)。そして今年10月末の終値は924円。しかし今年9月に東証1部に移行した同社は、並行して9月末割り当てで1対200の株式分割を実施しています。つまり保有していた株1株が200株に増加したわけです。従い、10月末の手持ち株の時価総額は「924円×200株」=18万4,800円+配当金で80%近いパフォーマンスを残したことになるわけです。

ですが、パラカ対パーク24の1年間のパフォーマンスを比較する際、株式分割についてはとりあえず、脇に置くべきだと考えます。むしろ群雄割拠状態の業界にあり、後発でありながら着実に収益を積み重ね、東証1部に移行しえた背景にこそ目を向けるべきです(移行への備えとして、株式分割も行われた分けですので)。同社は一貫して先発組に対する差別化戦略を、生き残り・勝ち残りの重点政策に据えてきたのです。