差別化戦略

同社が執った差別化戦略は主に、以下の三点に収斂されるといえます。

*地方都市:現在発行中の会社四季報・材料欄に、『青森・甲府・姫路等の小型地方都市に力点』とあります。この1文が象徴するように同社はこの間、激戦区は極力避け、地方都市のコイン駐車場の展開に重点を置いてきたのです。

*還元方式:同社の駐車場は地主から土地を借りての、借地型が中心です。3月末時点で、借地駐車場が1,081件(1万3,153車室)あります。同社は数年前から、地主との借地に当たり「還元方式」の導入に力を注いでいます。要するに、半年間・1年間の駐車(時間)実数を基準にして地代を決める、という方式です。パラカ社内でも、この制度の導入に当たり激論があったとされています。地主に背を向けられる懸念が想定できたでしょうから、当然のことだったと考えます。が、実施に踏み切れました。そして徐々にではありますが、浸透し始めています。前記した3月末の件数・車室数のうち、87件・1,755車室が“還元方式”となっています。

*変形地・狭地の活用:地主にとっても持て余ましてしまうのが変形地・狭地の類です。地方都市の展開に注力していたパラカは、軽自動車に着目しました。地主が活用に窮している土地に、軽車室専用駐車場を提案したのです。「問い合わせ・オファーが増加している」という軽専用駐車場は、3月末で121件・505車室となっています。

また、パラカの株価はパラカの成長率を反映しきれていない、「株価は成長率に割り負けしている」と捉えることができます。中・小型株の成長率を株価が反映しきっているかどうかを測る経験的な物差しに、PEGレシオがありますが、パラカの時価のPEGレシオは0.445。「買い余地、十二分」を示しています。


成熟市場で期待されるワッツ

街角の一風景となったという意味では、100円ショップもその一つといえようかと思います。ただ100円ショップに関しては、指摘される「成熟感」が否定できません。しかしそうした指摘が強い市場にあって前8月期まで8期連続の営業増益を続けている企業があります。売上高規模でみると第4位のワッツです。今8月期も、「9期連続営業増益」計画でスタートしています。

ワッツもまた差別化戦略で、存在感を高めてきた企業です。100円ショップが好採算のPB商品開発に注力している点では、ワッツも同様ですが、同社の最大の特徴は、「直営店主軸」+「小型店(平均店舗面積約230㎡)」+「小商圏」の店舗展開法に求められます。ワッツ側の言葉を借りれば、「低コスト重視の身の丈経営」です。

なりは小さくても、ローコストに裏打ちされた着実な収益の積み重ねが、株式投資のパフォーマンスにも映し出されています。昨年9月の初値で同社株を100株取得していると、本稿作成時点の投資成績は値上がり益+配当で、87.2%といった具合です。


好材料

株式投資は美人投票、などと言われたりもしますが、そう指摘される要因の一つは「美人=好材料を有している」と捉えてよいのではないでしょうか。ワッツにはいま、以下の二つの期待(好)材料があります。

*「こものや」(タイの60バーツ均一店)が、成功。アジア進出に積極姿勢を示している。

*食品ディスカウントストア大黒天物産(2791)との合弁による、新形態の100円ショップ「バリュー100」(100円の食料品・日用品店舗)の展開です。

なお本稿作成時点でのワッツのPEGレシオも、0.65水準に止まっています。

業界のど真ん中企業への目配りが大切なことは、言うまでもありません。その動向で業界の盛衰、その背景にある世の中を見定めることができるからです。が中長期構えの資産株づくりを意図した時、業界への目配りに「差別化戦略で業界大手の背中を猛追する、準大手・中堅企業はないか!?」を加えることを、お薦めしたいと考えます。


photo:ロート製薬HP