中国は2013年の党3中全会で改革メニューを大々的に掲げ、2020年の実現に向けて意欲を示したが、今年の党5中全会では「5大発展理念」を強く訴える一方で、改革については積極的なアピールが見られなかった。このため、今年の建議を見る限りでは、ひと頃に比べて改革姿勢がやや影を潜めた印象も否めない。こうした中国情勢の変化を中国ウオッチャーはどのように見ているのだろうか。日中産学官交流機構・特別研究員の田中修氏に解説して頂いた。


党5中全会建議で「改革」は小項目扱い

第13次5ヵ年計画の第3の特色は、2013年に党3中全会で決定された改革メニューについて、重要な分野・カギとなる部分で計画最終年度の2020年までに「決定的成果」を挙げなければならないということである。

しかし、今回の「建議」では、5大発展理念を強調する一方で、改革の面は余りスポットが当てられておらず、「建議」本文でも小項目として扱われている。この点につき、筆者は11月30日〜12月3日に訪中した際、中国側エコノミストに理由を尋ねてみた。彼らの答えは、一様に「5ヵ年計画は経済社会発展計画なので、おのずと発展にウエイトがかかってしまう」とのことであった。

しかし、「建議」も全く改革に触れていないわけではないし、その後、国務院の楊晶秘書長が人民日報11月20日に論文を寄稿し、改革につき補足説明を行っている。改革の注目点は以下のとおりである。


財政・税制改革——11種類の個人所得税の分類を整理・統合等を実施

楊晶秘書長は財政・税制改革について、3つのポイントを指摘している。まず「税制改革」では直接税のウエイトを徐々に高め、11種類もある個人所得税制の所得分類を整理・統合する。サービス業に係る増値税を営業税に改める改革を推進し、税率を簡略化する。不動産税の立法を加速するというものだ。また、2つ目の「中央・地方財政改革」については、中央と地方各レベルの政府間の権限と財政支出責任を合理的に区分してバランスをとり、中央の権限と財政支出責任を適度に強化する。中央と地方の財政収入の配分を調整する。

3つ目の「予算制度改革」は、公開・透明な予算制度を確立する。中期財政計画による予算管理を実施する。一般性移転支出(地方交付税に相当)を増やし、補助金を厳しく抑制する。地方政府の債券発行による資金調達メカニズムを確立し、地方政府の債務について規模をコントロールし、予算により管理するとしている。