企業のプレスリリース

企業のプレスリリース、或いは何らかの事象によるニュース等で株価が大きく動くといった事があります。勿論、ランダムウォーク仮説に基づいた際に、新しい情報が価格に反映されたと単純に考える事も可能です。しかし、その値動きが現時点で実体を反映したものかという点で考えた時、アナウンスメント効果が働いていると言える事があります。

例えば、10月7日にソフトバンクが、Yahoo!のEC(ショッピングやオークション)を無料化するという方針を発表した事を受け、その翌日、楽天の株価が暴落しました(下図参照)。

図:楽天株式会社の1週間のチャート

出典:Yahoo!ファイナンスより引用

10月7日の終値1354円から10月8日の始値1084円まで下がり、一時的に時価総額にして約20%失われたわけですが、実体として本当にそこまで楽天の価値は失われたのでしょうか。確かに、楽天に出店する場合、多額の維持費がかかるわけで、Yahoo!ショッピングでの出店無料化はインパクトが大きいです。しかし、楽天において インターネットサービスセグメントは54.5% であり 楽天市場はその中の一部 に過ぎません。

将来的にECビジネスがどうなっているかは分かりませんが、少なくとも今の楽天の実体に大きな影響が出ているわけではないので、ここではソフトバンクの発表が楽天の投資家の心理に影響を与えたと考えるのが自然でしょう。

アナウンスメント効果は「ストーリーの共有」

ソフトバンクのEC無料化発表に伴う楽天株の暴落に見られるように、アナウンスメント効果は、発言や報道を見た人々が「ストーリーを共有する」事から起きます。

選挙で圧勝の予想が報道された時は、多くの人が「他の人が投票するから大丈夫だ」というストーリーを共有しています。異次元緩和の場合は、「将来、大胆な金融緩和が行われる」というストーリーが共有される事によって期待インフレ率が上がります。楽天の場合は、「Yahoo! のEC無料化によって、楽天の事業に影響が出る」というストーリーや「Yahoo! のEC無料化によって、楽天の事業に影響が出ると考える投資家がいる」というストーリーが共有されているはずです。

そのストーリーの共有は、場合によっては人々の予想とは正反対の結果を招く事があるので、ある情報から何かストーリーが浮かんだ場合は、そのストーリーが他者にも共有されていないかどうかを考える事が重要でしょう。


BY たけやん:経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている

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