「事業者間連携」の推進
こうした建物の評価手法の見直しや建物への安心度を高めることで、消費者が持っている中古住宅への様々な不安の払拭、そして円滑な売買市場の形成が進むこととなる。
実際に、平成27年度の国土交通省の取組みの中に「多様な消費者ニーズに対応した中古住宅取引モデルの検討」があるが、この検討業務は中古住宅の質に関する情報等を明らかにした上で取引を行うための、売主側・買主側それぞれの宅建業者に必要とされる業務を整理したものを「中古住宅取引の標準的な取引モデル」とし、新たなスタンダードとして市場への定着を目指すというものだ。
国土交通省はこれまでにも平成24年度と平成25年度の2年間、宅建業者を中心としリフォーム業者やインスペクション業者、住宅瑕疵担保責任保険法人、金融機関等の中古住宅取引に関わる様々なサービスを提供する事業者が連携することにより、消費者に対してワンストップでサービスを提供できる仕組み作りを行う団体を採択し支援してきた。
そして、平成26年度には、消費者に対しての情報提供やコンサルティングが不十分な結果、消費者が本来のニーズに合致した物件を選択しにくい状況にあることを改善するために、同じく宅建業者を中心とした不動産関連事業者による全国17の連携体を採択、消費者への情報提供の促進等に係る先進的な取組みを行ってきた。
今年度は更に「安心な中古住宅取引の普及促進事業」として、これまでの活動を踏まえ、具体的に消費者や宅建業者・関連事業者等に対して周知・啓発を行う事業を実施する連携団体13を支援している。
こうした取り組みにおいて宅建業者が行うべきサービスとは、主に「インスペクション」の実施、「瑕疵保険」の付保、「住宅履歴」の保存、「告知書」の徹底等を、宅建業者単体ではなく、建築士等専門家と連携することで消費者の建物に関する不安を排除し、安心の取引の実現を目指すもの。
採択された13の連携体がそれぞれ消費者や宅建業者やその関連事業者に対しての周知及び啓発を行っているが、その中でも特に売主側の宅建業者が行うべき業務に関しての整備及び普及を行っている「良質中古住宅推進協議会」の活動について取り上げてみる。
「情報公開による早期高値売却」
「良質中古住宅推進協議会」では、「売却の窓口®」という共通ブランドを構築し、現在既に十数社の宅建業者がパートナー企業として活動を開始する。
この取組みでは、売主による不動産売却の時点において①「インスペクション」の実施、②最長5年間の「瑕疵保険」の付保、③「住宅履歴書」の生成、④「告知書」の事前作成、⑤「24時間コールセンター」加入の5つの項目をパッケージ化している。これらのパッケージにより実現するのは「買主の中古住宅購入への不安の払拭」だ。
平成23年度に国土交通省が行った「土地問題に関する国民の意識調査」によれば「中古住宅に抵抗がある理由は?」との問いに対する理由の上位には、「耐震性等品質が低い」「リフォーム・メンテナンス費用がわからない」「品質に関する情報が少ない」「保証やアフターサービスが充実していない」というものが並び、まとめると消費者が中古住宅に抱く問題は「性能に関する情報不足」と「保証やアフターサービスがない」という2つに集約されると言える。
つまり、こうした買主の不安を払拭することで、スムーズな中古住宅取引が行われるとともに、従来の手法によって市場に売りに出ている物件との差別化が実現するとしている。
また、築20年超の木造住宅や築25年超のマンション等においても、瑕疵保険を付保することで「住宅ローン減税」を受けることが可能となるなどの金銭的なメリットも提供することで、安心・安全と並行して高値での成約も可能としている。尚、同協議会では、平成26年度の採択事業においてその消費者の動向を実証し、数々の成約事例をすでに報告している。