(写真=Thinkstock/Getty Images)
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信頼できる家族に財産管理を託すことのできる「家族信託」は老後や認知症、相続の備えとなる。財産を守ることが役目の後見人に比べて「家族信託」は財産の組み換えや運用、売却など積極的な財産管理ができるのである。信頼はしていても不安な場合は別な身内や外部の専門家を信託監督人とし財産管理のサポーターとして置くことができる。

「そろそろ相続のことを考えなくては」と思っている間に親が認知症になってしまったというケースがある。認知症になってしまうと自分で思い通りに財産が動かせない。自分で財産を動かせないと、自分にとっても家族にとっても不便が生じてしまう。相続の対策として「成年後見制度」もあるが後見人をつけることで面倒になることも多々ある。そこで、今回は今注目の「家族信託」について紹介する。

「家族信託」とは?

相続対策として最近「家族信託」というものを耳にするようになった。この「家族信託」は法改正によって生まれた「信託」の方法のひとつである。2006年12月の信託法の改正により信託銀行に依頼しなくても、営利を目的とせず特定の人から1回だけの信託であれば、信託業の免許不要で誰でも「信託」を組成できるようになった。

「信託」とは財産の所有者・権利者(委託者)が目的達成のために信頼できる人(受託者)に契約や遺言により財産を任せ、受託者は目的に従って受益者のために財産の管理・処分をする制度である。

営利を目的に免許を持って信託を行っているものを「商事信託」、営利を目的とせずに信託を行っているものを「民事信託」と分類される。その「民事信託」の中でも家族に託すものを「家族信託」といわれているのだ。

「家族信託」の活用事例を紹介しよう。

突然、認知症になっても安心

個人でアパート経営をしている方の父親が高齢で認知症になってしまったとする。認知症になると賃貸契約、管理委託契約、大規模修繕、建て替え、売却等ができないので、長男は困惑してしまいどうすることもできなくなる。

こんなとき「家族信託」で父(委託者)がアパートの権利を長男(受託者)に信託する契約を結ぶとしよう。アパートから得られる利益は父(受益者)のものとする。こうすると、賃貸契約、管理委託契約、大規模修繕、建て替え、売却等を長男ができるのである。

次にこんな事例もある。

長男の嫁にすべて持っていかれる?

子供のいない長男夫婦と同居中の父は、財産を次男の子(孫)に財産を相続させたいと思っていた。しかし、父が亡くなり子供のいない長男が父の財産を相続した。その後、すぐに長男が死亡し、父の残した財産のほとんどが長男の嫁に相続され、いずれは長男の嫁の一族のものになってしまうことになった。

これを回避するにも「家族信託」は有効である。父(委託者)が次男の子である孫(受託者)と信託契約を結ぶのだ。第1受益者を父とし、父が亡くなったあとの第2受益者を長男とする。長男の死後の第3受益者を長男の嫁とし、長男の嫁の死後、受益権を孫に相続させるという契約内容にすることで長男の嫁の一族に財産が流れてしまうことが防げるのである。

マンション建設計画中に意思能力がなくなり…

もう一つ事例をあげてみよう。高齢の父が古い家を壊し、相続対策としてマンション建築を計画。相続人は長女ひとりのため揉めることはないが、この長女も病気がちで入退院を繰り返している。長女の子が色々と世話をやいてくれるため、父も長女もすっかり長女の子に頼っている。

このマンション計画は竣工まで約1年で資金調達は銀行の借入だ。ところがこの計画から竣工までの期間に父の意思能力が無くなってしまったのだ。その結果、借入の承認ができず、銀行からの借入が出来なくなってしまった。この場合、父(委託者)と長女の子(受託者)が受益者を父として信託契約をしておけば、マンションの引渡しも借入も、可能であった。ほかにも不動産を共有で持っているケース、障害者の相続など「家族信託」は柔軟に対応できるのである。

「家族信託」の課題と問題点

以上の事例をみてみると、「家族信託」は良いことばかりのように見えるが注意も必要だ。

まず「家族信託」が相続における節税対策にはならないことは頭に置いてほしい。受託者が暴走し勝手に財産を処分したり受託者が委託者より先に死亡してしまったりすることも考えられる。受託者の行為をチェックし、死亡時の対策を考えておかなければならない。

金融機関における口座や融資、資金移動においても、やりとりでつまずく可能性がある。「家族信託」はまだ一部の金融機関にしか浸透していないので、自分の取引銀行が「家族信託」について対処法を考えていないという可能性もある。つまり銀行に聞いても銀行も良くわからないのだ。税務や法務においても、不明確な事項も多々あるのが現状だ。

家族間トラブルもあるかもしれない。「家族信託」を選択するには、家族間の意思の疎通や話し合いは必須だ。そして何よりの問題は、注目されているとはいえ「家族信託」をアドバイスする専門家がまだまだ少ないというところだ。まだまだ課題の多い「家族信託」ではあるが、財産管理、相続や夢を実現するための選択肢のひとつとして、押さえておくとよいだろう。今後の広がりに注目したい。

廣木智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録FP。

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