2015年12月19日、東京都内で開かれた『 金融機関が教えたがらない 年利20%の最強マネー術』『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術 』の出版記念セミナーから、『 銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術 』の著者、高橋忠寛氏(リンクマネーコンサルティング社長、CFP)の講演を紹介する。高橋氏は「お金のことを相談する人は慎重に選んだ方がいい」と強調し、「カモネギだ!と銀行員に思わせない方法」「本当に価値のある金融商品とは」などのテーマについて語った。

【前編】 「いまFPが伝えたいこと① 金融機関が教えたがらない「出口」で得する資産運用術」

お金のことを相談する人は誰がいいか

お金のことを誰に相談するか。『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』というタイトルなので「銀行員」という答えにはならない。きょうの流れだとFPになるかもしれないが、FPがいいと思っているわけでもない。FPも当然いろんな人がいて、相談していいFPがいる一方、そうでないFPもいる。

相談する相手は慎重に選んだ方がいい。銀行員でもいいが、自分のためにどのようにコンサルしてくれるかをきちんと見極めて、銀行員を選んだ方がいい。ただ、「いい銀行員」を選べるならそもそも自分で金融商品を選べると思う。

なぜ銀行員が必ずしもよくないのかと言えば、それはセルサイド(売り手)のバイアスというものがあるからだ。商品を売っている側の人間は悪意があるかどうかは別にして、顧客に商品を買ってもらわないと仕事がまわらない。このため、世の中にあふれている情報も、セルサイド(売り手)が発信している情報が圧倒的に多い。情報の発信者が売り手の場合、最終的には商品を買ってもらいたいと思っている。必ずしも顧客にとっていい商品を勧めるとは限らない。発信されている情報が、どういう情報なのかを意識していただくといいのかなと思う。

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銀行員のアドバイスに従って資産運用すると絶対うまくいかない

ある2つの立場があり、片方の利益を上げようと思うと片方は損をしてしまう関係のことを「利益相反の関係」という。個人と銀行員の関係はこれに当たる。

個人が金融商品の取引で支払う手数料が金融機関側のもうけになる。金融機関がもうけることは悪いことではないが、個人が何か買う場合に、金融機関がもうけようと思うほど顧客は手数料を払わなければいけなくなる。しかし、個人が効率よくもうけるためには手数料はなるべく支払わない方がいい。

銀行員に「アドバイザー」「コンサルタント」という肩書がついていても基本的にはアドバイスが仕事ではなく、資産運用のプロでもない。売るための行動をとっているにすぎない。こうした前提があることを意識したほうがいい。

銀行員は客に早く動いてほしい

銀行員と個人の間では、投資に対する時間軸が違う。個人は今すぐにお金を増やしたい、買わないといけないという状況はほとんどない。一方の金融機関側は1カ月、3カ月、半期と営業目標がある。できるだけ客にも早く動いてほしいと思っている。そうすると投資であれば「いつ投資をしたらいいですか?」と質問すると、「今です」と答えることになるし、「いつ売ったらいいですか?」と質問すると、「今がいい」という答えになる。こうしたことが起きるのは、時間の感覚が一致しにくいことに原因がある。

金融機関の担当者には転勤がつきものである。このため、金融機関の担当者側には「在任期間中に取引をしてほしい」という意識がどうしてもはたらいてしまう。客からすると、担当者の転勤などどうでもいいことかもしれないが、担当者側には大切なこととなる。逆に、顧客の資産を10、20年かけてサポートしてあげたくとも、現実問題、そういうことができる体制にはなっていない。こうしたことからも金融機関側と時間軸の考え方がわれわれとは違うことが分かる。


カモネギだ!と銀行員に思わせない方法

「カモネギだ!」と銀行員に思われやすい、注意した方がいいタイプは次の3つ。

まず、「担当者に教えてもらおう!」という人。金融機関側にすると「ありがたいお客様」になってしまいやすい。経験を積んだ営業マンであれば客のニーズを引き出して金融商品を販売することもできるが、若い、経験の浅い行員は対応できない。このため、マニュアル通りになりやすい。こういったこともあって、「教えてもらおう!」と思ってはいけないのかなと私は思う。

次に「みんなと同じ!」に安心する人。よく「ランキング上位です」「売れています」という商品は、金融機関側が客に勧めているから上位になっている。金融に詳しい人や商品を見極められる人が選んでいるわけではなく、金融のことを分からない人が金融機関側に勧められて購入し、ランキング上位に入っている。例えば、新商品。新商品にはどうしてもノルマがでてくる。「今であればこれおススメですよ」と言われている商品は、金融機関側が「今売らなくてはいけない」という理由で勧めている。

最後にコスト意識の低い人。投資信託でも金融機関によって手数料は違う。商品をどこで買っても同じだろうと思われることは多いが、投信についてはネットなら手数料ゼロなのに、窓口なら2%、3%ということもよくある。営業マン側からすると、コスト意識の高い客と取引をしても大きな収益にならないということになってしまうので、気持ちからすると残念になる。しかし、個人からするとコスト意識をもって、同じような運用しているものがもっと手数料安く買える可能性があるんではないかということを常に考えることが大切だ。

金融商品の販売形態の変化

本書の中では書くことができなかったことがある。それは、金融商品の販売形態の変化について。

金融商品の販売形態には、「フィー」中心か「コミッション」中心かの2種類がある。「コミッション」は金融商品を販売することによって販売手数料もらったりする販売形態のことで、日本やアジアは現在そうなっている。一方、「フィー」中心は、資産運用のアドバイスや相談に対して報酬を払う形態のこと。そういったものを中心にやっているのがイギリス、スイスになる。現在、アメリカも徐々に「フィー中心」になっている。

「フィー」中心の国がもともとそうだったのではなく、もとは現在の日本と同様「コミッション」中心だった。イギリスは貿易の規制で金融機関が手数料とってはいけないという体制つくり、フィーに移行した。アメリカは市場原理。客側がだんだん賢くなり、金融機関側にアドバイスを求めると必要ない商品買わされてしまうということに気づき、きちんとした資産運用のプロにコンサル料を払うようになった。いずれも15年、20年かけて動いていっている。

本来、「フィー」中心に移行していったほうがいいのかなと思う。

本当に価値のある金融商品とは

本当に価値のある金融商品はシンプルなもの。さらにコスト安い商品利用することで確実にリターンを改善できる。確実にお金、手元残すお金増やせるのはコスト安い商品を使うこと。

そして資産運用で大切なのはアセットアロケーションを意識すること。アセットロケーションは今後大事な概念になる。同じ株に投資するのであっても税金がかかる口座とかからない口座があり、取っているリスクは同じでも口座が違うだけで手元に残るお金が違う。この考え方は確定拠出年金やNISAなどが関わってくる。

お金のことを相談する相手は慎重に選ぼう。そして、自分が情報収集していくこと。資産運用は決して難しくない。まずは失敗しても困らない余裕資金で臨んでほしい。

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次回はFPによるトークセッションの様子をご紹介する。(ZUU online 編集部)

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