(写真=リフォーム産業新聞/岩切剣一郎氏)
(写真=リフォーム産業新聞/岩切剣一郎氏)

今、住宅業界の注目プレーヤーは誰かと聞かれて、「カリフォルニア工務店」と答える人は少なくないだろう。

枻(えい)出版社(東京都世田谷区)の建築部門であるカリフォルニア工務店は、2012年に誕生。以来、ユニークな名前とアメリカ西海岸を意識した住宅デザインで、全国にファンを拡大させてきた。この設計士集団を率いる岩切剣一郎氏に、その来歴と家づくりに対する思いを聞いた。

現場監督と設計の激務を経験

◆まず岩切さんが住宅の道に進まれたきっかけを教えてください。

ガキの頃から工作とか美術とか、ものづくりが好きだったんですよ。それで工業高校に入って製図が得意だったから、じゃあ建築にしようと。その後、上京して、神奈川県座間市のゼネコンに就職しました。バイクとかサーフィンが好きで、海の近く、湘南に行きたいというのもあったので。

◆最初は住宅関係ではないんですね。

現場で設計をやりたかったんです。設計で入ったのに、ずっと現場監督だったんですけどね。

その後2級建築士の資格を取って、城南建設の下請けをやっている設計会社に就職しました。当時城南が伸びていて、月に40棟のペースで住宅の設計をやってました。毎日確認申請で市役所に通うような生活でしたけど、地区計画や法律関係とか、これもすごい勉強になりましたね。

その後、城南建設の設計部で1年ほど働いて、辞めてから一発で一級建築士の資格を取りました。

◆一発合格とは素晴らしい!

冬のボーナスを頼りに、山にこもって勉強してました。冬は各地でスノーボードで遊びながら。その次に入ったのは店舗と住宅設計をやる会社。僕にとっては、この会社での経験も衝撃的でした。

築40年以上の戸建てをビーチハウス風に改修
築40年以上の戸建てをビーチハウス風に改修

「欲しい家が作れる」殴られたような衝撃

◆その経験というのは?

住宅とは全く違う、店舗設計という世界を味わえたこと。住宅の設計は日常を作ることが目的で、カタログから組み合わせて作る。でも店舗は非日常の空間を作ることが重要で、設計の発想も遊びから来てるんですよ。

これって、僕にとっては頭をハンマーでたたかれたような衝撃でした。「これで住宅ができちゃうんだ。これまでは夢の中にしかなかった、洋書の中にあるような住宅が作れちゃんだ」という感じでした。今まではドアハンドル一つ変えるだけですごく良くなるのに、会社のルールがあってできない。これまで何やってきたんだと思いましたよ。

◆その会社では、どういう家づくりをしていたんですか?

僕と同じ趣味を持っている人、バイクとかサーフィンが好きな人に、ガレージとかアメリカンハウスみたいな家を作りませんか、と提案することがけっこうありました。なんでそういう人たちが僕のところに来るのかと言うと、家を建てようとした時、選択肢がないからなんです。

僕は住まいとかインテリアって、ファッションの延長上だと捉えてる。自分の好きなものはまず服に表れる。それが大きくなると車、部屋、そして家になるんですよ。でもなんで自分に合った家がないんだろうっていう人が少なからずいる。そういう人たちが僕のところに来て、僕の「欲しいと思う家」の提案に共感してくれた。

今まで僕が好きでやってきたことは、ここで発揮できるなと実感しました。それで、こういうテイストが好きな人はこの指止まれってやってるのが、今のカリフォルニア工務店ですね。

一見サーフショップのように見えるカリフォルニア工務店の店内には、アメリカのホームセンターに置かれているような工具や日用品が並ぶ
一見サーフショップのように見えるカリフォルニア工務店の店内には、アメリカのホームセンターに置かれているような工具や日用品が並ぶ