「宅建士」――旧称・宅建主任者

◆独学でなかなか合格できない人も多数

2014年に宅建業法が改正され、宅地建物取引主任者から名称が変更された宅地建物取引士(宅建士)。リンクアカデミーの楠本氏によれば、宅建士は不動産業、建築関係、金融関係に取得者が多い。「例えば、金融機関の方が不動産担保で融資を行なう際、最低限の知識がいるので宅建士の勉強をするなどの例があります。いろいろな業界で役立つ資格なので、受講者数が多いと言えます」という。

毎年20万人以上が受験する人気の資格で、合格率は15%程度。試験は年1回、毎年10月に行われる。試験は択一式の問題のみなので、暗記を中心に学習をしても比較的、合格しやすい資格と言える。

◆「独立開業しやすい」という声の反面、「それだけではダメ」という意見も

宅地建物取引士に合格した後は、都道府県知事の登録を受けて「宅地建物取引士証」の交付を受ける。そのためには、宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を持つか、国土交通大臣が指定する実務講習(実務経験ない人が対象)を受ける必要がある。

独立開業がしやすい資格であると前出の楠本氏は語っている。設備投資の必要がほとんどなく、例えば不動産業では物件情報のネット検索システムが確立しているので仕入れのコストもかからないからだ。たしかに初期投資にコストはあまりかかりそうにない。

また他の士業は取り扱う件数やその作業時間に一定の上限ラインが出てくるが、宅建士の場合は、例えば都心部の物件などは単価が高いので、取引が円滑に進み、かつ複数を手掛けることで、売買の手数料を元にした報酬が高くなることがある。

不動産業界だけではなく、店舗開発を行なう小売・外食産業や、不動産の担保価値を判断する金融業界、企業が保有する不動産の運用や、事業用地の確保と契約など、宅建士が活躍する分野は幅広い。不動産系の資格を取ったからといって、自分が活躍する世界を不動産業界に限定することはないのだ。

一方で、宅建士の資格を取得するだけでは事足りないとの意見もある。

前出の野本氏は「宅建士は取得者が増えていますので、それを持っているだけでは評価が上がらないという傾向があります」と指摘。その上で、「宅建士だけではなく、司法書士やファイナンシャルプランナーなど、いろいろな資格を身につけておくべきと言えるでしょう。そうした方が不動産業界や金融業界でコンサルタントとして活躍されていることが多いようです」というのだ。

例えば、宅建士を取得してから、1年半から5年をかけて司法書士の資格を取得する場合、顧客である宅建業者の信頼を得やすいために不動産の登記申請の業務が増えることがある。または、宅建士の取得から半年から1年をかけて行政書士を取得する場合、主に建築や土木関係の許認可を支援することで有利な開業になることがある。

紹介した資格はいずれも、取得すれば将来のキャリアイメージが広がるものばかりだ。独立を視野に入れるなら、資格はある種のライセンスともいえる。かかる時間や費用などのコストと取得後に得られるリターンをしっかり計算したうえで、検討してみてはどうだろうか。

(記事提供: BUSINESS NOMAD JOURNAL 編集部)

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