非農業部門雇用者数(前月差) 1月 +15.1万人 市場予想 +19.0万人 前月 +26.2万人(下方修正)
失業率 1月 4.9% 市場予想 5.0% 前月 5.0%
労働参加率 1月 62.7% 市場予想 62.7% 前月 62.6%
平均時給(前年比) 1月 +2.5% 市場予想 +2.2% 前月 +2.7%(上方修正)
雇用者数の伸び案外もその他は堅調
5日発表された雇用統計は、米国労働市場の堅調な回復を確認させる内容だった。ただ、非農業部門雇用者数のヘッドラインは前月から15.1万人増と市場予想を下回って前月から伸びが低下したため、メディアの報道はこの部分をフォーカスして「雇用者数の伸びが鈍化」としたものが目立っていたが、その他の主要項目を確認すると、違う姿が浮かび上がってくる。
まず改めて非農業部門雇用者数を確認すると、1月分が予想および前月を下回ったことに加えて12月分が+29.2万人→+26.2万人に下方修正された。ただ、11月分は+25.2万人→+28.0万人に上方修正されたことから過去分の修正は計マイナス0.2万人とほぼニュートラルだった。
一部で完全雇用と指摘される水準まで失業率が下がっているなかでは、雇用者数の伸びがある程度限定的になるのはやむを得ないとみられる。15万人以上の伸びを確保している点から見ても、大きな問題はないと言えそうだ。
そして今月注目すべき改善があったのが失業率と労働参加率である。失業率は4.9%とついに5%割れの水準まで改善した。これは2008年2月以来約8年ぶりの低水準である。特筆すべきはこの失業率の改善が、労働参加率の上昇の中で起きていることである。
以前にも本レポートで触れたことがあるが、失業率は失業者÷労働人口(15歳以上の働く意欲のある人)で計算されるので、実質的な就業者数が増加していなくても、職探しを諦めてしまった人が労働人口から除かれれば失業率は改善する。
例えば失業者10人、労働人口100人(就業者90人、失業者10人)であるとき、失業率は10÷100×100=10%である。一方、もし失業者10人のうち4人が職探しを諦めてしまえば、失業者から4人が除かれることとなる。(10-4)÷(100-4)=6÷96=6.25%と実質的には労働市場の改善が起きていないにもかかわらず失業率は減少する。
先般の失業率の改善はこのように労働参加率の低下が進む中で起きていたが、今月は労働参加率が上昇する中で一段の失業率改善が起こった。これは米国労働市場の引き締まりがいよいよ進んできた可能性を示唆するものと言える。
米国労働市場の引き締まりを示唆する可能性のあるもう1つの指標が、平均時給の伸びである。グラフに示したように平均時給は昨年まで概ね前年比2%前後で推移していた。それが1月は2.5%、昨年12月は上方修正されて2.7%である。レンジを上抜けしたような印象となっており、FRBの想定する人件費上昇→インフレという流れが出てきた可能性があると言えるだろう。