雇用統計後の市場の反応とFOMC利上げ見通し

非農業部門雇用者数の予想比下振れを受け、マーケットは当初金利低下・ドル安で反応した。ただ、雇用統計の詳細を見てみると上述したようなポジティブな内容が含まれていたため、その後は金利上昇・ドル高の推移となった。そして株式市場は3月のFOMCで利上げが実施される可能性が上昇したことを嫌気して下落した。

雇用統計で労働参加率の上昇を伴った失業率改善、そして平均時給の伸びといった労働市場の引き締まりを示すデータが見られた以上、雇用統計発表前より3月FOMCで利上げが行われる可能性が高まったことは事実だろう。ただ、筆者は依然としてその可能性は低いとみている。その理由は、米経済の低迷とマーケットの混乱である。

10-12月期のGDP成長率は0.7%止まり、ISM景況感指数は製造業ばかりでなく非製造業も低下、そして企業決算は減益といった状況下で利上げを強行する必然性は極めて低い。さらに市場の混乱を示し、別名恐怖指数と呼ばれるVIX指数は依然として平常時よりかなり高い水準にある(グラフ参照)。

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こうした状況下で利上げを強行すれば、一段の株安を生じさせる恐れがありそれが逆資産効果となって米国経済を傷める可能性もある。常識的に考えれば3月利上げの可能性は依然として低く、早くても次回利上げは6月以降と考えるのが妥当ではないか。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部

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