(写真=PIXTA)
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労働力人口の減少

前回はこちら: 【人手不足時代の企業経営】「労働力減少と企業」前編 最近の雇用情勢

15歳以上人口(生産可能年齢人口)がどうかというのを見ると、1975年には8400万人でした。日本の人口のピークは2007年にあったといわれています。ここから既に、0歳以上の全体の人口は減少局面に入っている、日本は人口減少社会に入っていることになります。ただ、15歳以上で見ると、それでも若干増えるか、このところは横ばいとなった。

ところが、そのかなりの部分は65歳以上人口の増加で、今まさに団塊の世代が60代後半になってきました。この世代は1年間に270万人もいます。今、1年間に生まれてくる子どもが100万人前後ですから、270万人もいた団塊の世代が15~64歳を抜けるという状況になってきています。

その中で大きくその人口が減少し出すのですが、私もグラフを描いて驚きました。ピークが1997~1998年にあり、そのときに15歳~64歳の人口は8700万人ぐらいいた。ところが現在、7800万人ですから、この間に900万人が減っているわけです。生産年齢人口では、既にかなり天井が下がってきていると言えます。

こちらに描いてある図は、雇用者数が棒グラフです。これも1997~1998年がピークでした。ここから下がって、2007~2008年のリーマンショックの前に増加して、またリーマンショックを挟んで下がったということで、ここのところまた増えています。最近の日本の労働市場では、働く人たちの数が景気の善しあしに大きく左右されてきていることがお分かりになるかと思います。

その一方で、15歳以上で実際に働いている人たちの比率はどうか。これで見ると、かなり下がったと考えざるを得ない。64%ぐらいあったものが60%を切るという状況まで下がってきています。特に65歳以上の高齢層の増加が労働力率を下げています。労働力率はあくまでも15歳以上人口に占める労働力の割合ということになっており、ここに影響が出てきているということが言えると思います。

そして、もう一つ見ておかなければいけないのは、男性社員にとっては非常に厳しい状況が起こっていることがお分かりになると思います。企業に雇われて働いている男性の数(雇用者数)を見ますと、1997~1998年、そして先ほど見たように一度2007~2008年に上がりましたが、その後また下がっています。特に正社員について見てみると、常用雇用はかなり下がった。それに比べて一方的に上がったのが女性で、右肩上がり。

もちろん図では測っている尺度が違いますが、女性の雇用者、働いている人たちの数が急激に増えている。正社員に限定しても増えている。2013年から常用雇用の調査項目を総務省統計局「労働力調査」が変えたので、連続して見られないのですが、こんな動きになっています。

男性の雇用が増えないで、女性の雇用が増えていく影響はどこに表れているか。まず、産業別に見ると、建設や製造といった男性社員の比率の高い産業が雇用を減らしたということです。建設の場合、日本では9割近くが男性です。女性は1割。100万人減らしたのは、ほとんどが男性だったことになります。

あるいは製造、これも日本では7割が男性です。アメリカに比べても他の国に比べても、建設も製造もいずれも、男性比率が高いのが日本の特徴だと言われます。まさに産業によって性別分担がなされていると見える。

一方、医療・介護は7割が女性です。看護士・介護士に代表されるように、7割が女性。そこが雇用を増やしたわけですから、先ほど見たように全体の女性の雇用が増えていく。これは、一つは産業構造が変わったから。もう一つは、個別の企業で、特に採用、若い人たちの中で、女性の比率が上がっていくという二つを合わせた結果、どうも全体で女性の雇用が増えてきていると言えそうです。