基調講演 「労働力減少と企業」前編 最近の雇用情勢
・講師 樋口 美雄氏(慶應義塾大学商学部 教授)
皆さま、こんにちは。慶應大学の樋口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。70分の予定でお話をさせていただきたいと思います。ちょっと長丁場ですが、我慢して聞いていただきたいと思います。
今日私が話すタイトルは「労働力減少と企業」です。全体のタイトルは「人手不足時代の」と付いておりますので、私も本来ですと「人手不足時代の企業」とすべきかと思いました。ただ、そうする上では、私の考えとしては、いろいろなコーション、注意しなければいけないことがあるのではないかと思っています。
確かに、人口の減少は既に始まっています。あるいは生産年齢人口といわれている15歳~64歳の人口、これはまた後で見ますように大きく減少していますし、今後もこの減少は続くだろうと思っております。しかし、そのことが人手不足になるのかならないのかというのは、まさに経済が今後どのように運用されていくのか、景気の動向はどうなのかということに大きく左右されます。
労働力人口の方も減少した。しかし、今度は企業における採用についても減少して、日本経済が縮小均衡に陥らなければいいなと思います。それに陥らないためにはどうしたらいいのかということも、目配りをしていかなければならない課題ではないかと思っております。
と言いますのも、例えば人口が減少する、これによって労働力人口が減少するわけですが、ある意味では人口の減少、即、消費者の減少となる可能性があるわけです。そうすると、今までの1人当たりの所得が同じであれば、その分だけ消費が低迷してくる。消費が低迷してくると、それによって特に消費財、サービス産業においては逆に人が余ってくるという可能性もあるのではないか。
あるいは、これだけ経済のグローバル化が進展してきているということになると、日本企業が国内だけで生産活動をしているわけではない。時には海外の方がむしろ多くの人を雇っているということが進展していくと、日本の人口は減少して、海外でみんな人を雇うということになってきます。そうすると、日本の労働市場そのものもまた、需給逼迫というよりも、どちらかというと、人口は減少しながら、労働力が余ってくる可能性もなきにしもあらずと思っています。
こういったことを避けるためにはどうすればいいのかを考えますと、消費をいかに回復していくか、給与や所得の引き上げと連動して、企業における生産性をいかに上げて競争力を高めていくのか、やはり企業が日本に残ろうという意思決定を誘引するような取り組みも必要ではないかと思っています。今日はそういうことを含めて話をさせていただきたいと思います。
(以下、スライド併用)