はじめに
◆詳細はまだ検討中
本年1月12日、米国最大生保であるメットライフが、米国内の個人向け生命保険・年金事業を切り離す方向であることを発表した。
中核会社の名前はメトロポリタン、本社はニューヨークと、いかにも都会派の同社は1868年の創業。20世紀の間を相互会社としてすごした同社は、巨大化競争に参じるべく、2000年に株式会社化を果たし、以降、シティグループの保険部門、AIGの海外部門(アリコ)など、活発に買収を繰り返して事業を拡大してきた。特にアリコの買収は、それまで米国限定のイメージが強かった同社の、(わが国を含む)海外でのプレゼンスを一気に高めた。
そのメットライフが、今回はダウンサイジングに挑むという。その背景は何か。
今回は、同社の分離計画の概要とその背景たるノンバンクSIFI(システム上重要な金融機関)指定をめぐる論争をレポートする。
メットライフが発表した分離計画の内容
本年1月12日に同社が発表したのは、「米国内のリテールセグメントの相当部分の分離を追求する」という方針を記載した約9.000字の文書である。
具体的なスケジュールは未定である。また、どのような形で分離するかについても未定であり、現在、公募による独立公開企業の発足、スピンオフ(親会社との資本関係があるなど関係が深い別会社とすること)、売却など、さまざまなオプションが検討・評価されている段階である。
◆分離対象の事業
分離される米国のリテール生保・年金ビジネスは、2015年9月の数値で見ると、メットライフの全体営業利益の約20%、また米国内全リテールセグメントの営業利益の50%に相当する事業である。
また、分離した事業を一つの会社としたとすると、新会社は約2400億ドルの巨大な総資産を有することになる。
なお、メットライフの米国内変額年金勘定の約60%が分離の対象となっている。
次の現子会社群は、分離されることが決定している。
メットライフインシュアランスカンパニーUSA
ジェネラルアメリカンライフインシュアランスカンパニー
メトロポリタンタワー生命保険会社
メットライフインシュアランスカンパニーUSAが引き受けるリスクを再保険している子会社群
◆分離後の本体に残る事業
メットライフに分離後に残る主な事業部門は、(1)GVWB(2)CBFの2部門と(3)その他の事業である。
メットライフは、米国市場では、GVWB事業を通じて従業員給付のリーダー、CBF事業を通じて年金および退職商品の主要プロバイダーであり続けるとしている。
(1)GVWB(GroupVoluntaryandWorksiteBenefits)部門
企業市場で従業員に加入を促す任意加入の団体保険商品である団体生命保険、団体歯科診療保険、団体短期就業不能保険、団体長期就業不能保険等を提供
(2)CBF(CorporateBenefitFunding)事業
従業員に年金、退職給付を提供している大規模雇用主に投資マネジメントを提供
具体的な商品としては、年金、退職商品を提供
(3)メットライフに残る米国リテール向け事業は以下のとおり。
生命保険閉鎖勘定(株式会社化した際に、旧相互会社時代の保険契約を株式会社化以降の契約と分離して設けられた勘定)
損害保険
メトロポリタンライフインシュアランスカンパニー(MLIC)を通じて販売された生命保険および年金事業。MLICは、分離後は、個人生命保険および個人年金の引き受けを行わない。