経営の健康と生保
(写真=Thinkstock/Getty Images)

経営者が生命保険(法人契約)を活用する目的は、「節税」が第一要因になることが多いのではないだろうか。確かに、保険料の全部または一部を損金算入し、節税できることが生命保険(法人契約)のメリットの一つではある。また、保険商品を売る側も「節税商品」として営業することが多いので「生命保険(法人契約)=節税」と認識しがちなのだろう。

しかしながら、保険とは本来、もしもの時のリスクを保障するものである。経営者は、会社が安定的に事業を継続するためには、さまざまなリスクの対策をする必要がある。大きなリスクとしては、経営者の死亡、スムーズに事業承継できない可能性、会社運営に関わる資金調達の問題などがあり得る。

このようなリスクへの対策として生命保険(法人契約)を活用するということも有効なのだが、メリットをさらに一つひとつ確認していこう。

経営者が保険に入るメリットその1: 節税対策になる

冒頭でも述べたように一番のポイントは、「法人契約」とすることで保険料が経費として認められることだ、その上で、さまざまなリスクに備えることが出来る。経営者が法人契約で保険に加入する場合には、保険料の一部または全額を損金に算入することが認められている。

保険料を損金にできる分、利益は圧縮されるため納税額を抑える効果が期待できる。そして、この節税効果を生かしながら、経営者は万が一の時のダメージに備えるための「事業保障資金」「相続・事業承継資金」、または経営者自身の「生存退職金」などの資金準備が可能となる。

経営者が保険に入るメリットその2: 有利な資金調達

継続的に利益が出て「節税」のことばかり考えらえる状況ばかりでもないのが会社経営だ。会社が困ったときの活用法も押さえておきたい。

・簿外資産を積み立て、万が一の時に活用できる

前述の「事業保障資金」を例にする。経営者の万が一の際には銀行や取引先などからの信用が落ち、経営危機に立たされることも考えられる。その時のために準備しておきたいのが事業保障資金だ。経営者への死亡退職金、借入返済、買掛金支払い、経営者交替の影響による売上・利益減少の補填資金、自社株購入のための資金などにもなる。

事業保障資金の準備には、「定期保険」「長期平準定期保険」「逓増定期保険」などの活用を検討するのが有効だ。毎期の保険料の一部または全額を損金算入することで利益を圧縮し簿外資産を形成することができる。仮に資金繰りに困ることが起こった場合には解約し簿外資産を活用することで資金を調達でき、赤字を回避するための手段として使うことも可能である。

・契約者貸付制度で資金調達

保険の法人契約も個人契約と同様に解約返戻金が発生するタイプのものは、利息負担は発生するが、契約者貸付制度を利用することができる。貸付額は保険会社や保険商品により異なるが借入時の解約返戻金の80%~90%程度を上限として保険会社から借入が可能だ。解約も契約者貸付も審査などの面倒な手続きなく、比較的容易に資金調達できることはメリットと言えるだろう。

経営者が保険に入るメリットその3: 経営者の保障や退職金に活用

経営者の勇退時の生存退職金についても、法人契約の生命保険を活用すれば節税効果を享受しながら、原資を準備することができる。契約する商品や契約の形態によっては、適正なタイミングで解約できた場合、節税効果も加味すれば、100%以上の返戻率で解約返戻金が支払われる保険もある。

・生存退職金の原資には「長期平準定期保険」も

また、生存退職金の準備には、特に中小企業の場合には明確に社長の勇退時期が定まっていないケースが多いため、「長期平準定期保険」から検討すると良いだろう。保険料の払い込み期間中は、手厚い保障を確保しながら、高解約返戻率期間が長いため解約すべきタイミング期間も広く使いやすい。経営者にとっては使い勝手の良い退職金準備商品の一つといえるだろう。

さらに、生存退職金は受取時にも個人として所得税・住民税が軽減されるメリットがあり、退職金は長期にわたる勤労の対価の後払いという位置付から優遇された税制となっている。特に大きなメリットは、退職所得は他の所得とは合算されず分離課税となる点で、勤続年数に応じた退職所得控除があり、課税されるのは退職所得控除を超えた額の2分の1に対してである。

つまり、退職所得控除は20年勤続の場合は800万円、30年で1500万円、40年で2200万円となり、退職金がこれらの金額を超えなければ課税はされないということだ。見逃せないメリットである。

・退職金の現物支給

退職後の生活資金準備策として、これまでの法人契約の保険を解約せず、個人名義に契約者変更を行い退職金として現物支給するという方法もある。

保険料払込期間の契約者は会社のため、保険料負担も会社である。保険料払込は退職予定時期より前に完了させることで、個人への契約者変更後は保険料負担の必要はなくなる。退職金額の評価額は契約者変更時の解約返戻金相当額となる。

現物支給は貯蓄性のある保険も可能だが、掛け捨ての医療保険やがん保険を使うこともできる。掛け捨てであるため、契約者変更時の退職金額の評価額はゼロと扱われることになる。よって退職金として受取るのは、病気などの困ったときに入院給付金、手術給付金などを受け取ることができる「権利」のみとなる。会社が退職前に短期払いで保険料払込を終了していれば、個人としては費用負担なく安心を手に入れられるという意味では魅力的な活用方法の一つといえる。

ここまで経営者が保険に入るメリットを説明してきたが、「節税」などのメリットばかりに目を奪われてしまうと、後で想定外の損失を被ってしまうこともある。最後に注意点を3点だけ挙げておく。

1点目は、節税効果があるということは、利益がなければメリットも享受できないということ。2点目は、節税効果は課税を繰り延べしていることにより得られるものであり、解約時には、これまでの損金算入してきた分が雑収入として課税対象となることだ。その点、解約時の資金の使い方について戦略を立てておく必要がある。3点目は、会社の決算が今期は黒字でも翌期も黒字であるとは限らないが、保険料支払いは確実に続くことだ。「節税」対策の保険がキャッシュフロー悪化の原因になる可能性もある。

こうした注意点をしっかりと押さえていただきながら、経営者として保険のメリットを最大限に生かしていただきたい。

寺野 裕子 てらの・ファイナンシャルプランニングオフィス代表CFP ・1級FP技能士、投資助言業
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料等は一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。 FP Cafe 登録FP。

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