地銀
(写真=PIXTA)

仕事はどうすればいい? 夫が転勤になった時の悩み

夫が転勤になるというのは、勤務する会社が大きければ大きいほど、昔も今もサラリーマン家庭ではよくある話だ。子どもが生まれたばかり、一流校への進学のために塾に通っている、介護の関係などの理由で、単身赴任という選択になる場合もあるだろう。単身赴任は家族全員にとってストレスになることも多いため、最善の策とはいえないが、それでもこのような場合は仕方がないであろう。

今住んでいる場所から離れることができないといった事情は、妻が仕事を持っている場合も同じだろう。せっかく今まで積み重ねてきたキャリアを無駄にはしたくないが、夫の転勤先で同じ職種の仕事が見つかる保証はない。これまでは、このような場合の選択肢は二つであった。キャリアを捨てて夫に付いていくか、今の場所に留まって別居しながら仕事を続けるかだ。そこに今回、地方銀行勤務限定ではあるが、新たに第三の選択肢が加わった。

「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」

ことの始まりは、2014年3月に首相官邸で開催された「輝く女性応援会議」だ。これを契機に、輝く女性、そして輝こうとする女性たちを応援する各界のリーダーたちによるムーブメントが拡がったのである。日立製作所、三菱重工、LIXILグループ、千葉銀行などの大企業がメンバーの「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」(事務局は内閣府男女共同参画局)による行動宣言が、2014年6月にとりまとめられた。

この行動宣言には、それぞれの企業の女性の活躍に関する目標を設定し、達成に向けた取り組みを進めて、その進捗状況を定期的に公表していくことなどが記されている。そして、この取り組みの延長線上で、千葉銀行や常陽銀行、みちのく銀行、東邦銀行など全国地方銀行協会に加盟する64行の頭取が参加し、「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」が2014年11月に発足した。

「地銀人材バンク」を活用すればキャリアを継続できる

2015年4月に、その「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」が「地銀人材バンク」を創設した。

この「地銀人材バンク」は、地銀各行の行員が結婚や配偶者の転勤、家族の介護を理由としてやむなく転居するため退職する場合に、本人の希望があれば転居先にある地銀へ紹介する仕組みである。

紹介の方法は、今回新たに同会が整備する「会員各行の人事担当窓口のネットワーク」を通じて当事者銀行が相対で行う。これは全都道府県をくまなくカバーして運用される。

転居先の地銀への就職が決定すれば、元の地銀をいったん退職して、受け入れ先には中途採用枠で入社することになり、再び地元に戻れば再雇用の形で職場復帰もできるということなので安心だ。なお、この制度は女性に限らず、男性でも希望すれば利用が可能となっている。

「地銀人材バンク」は働き方の自由化の起爆剤となるか

労働人口が減少し続ける中で、今後、人手不足を補うために女性の社会参加は重要なテーマとなる。地元に根付いた経営を行う地銀では、顔ともいうべき窓口業務や営業などに女性行員が多く活用されている。

職務経験を積み重ねて高いスキルを持っている女性行員が、結婚や出産によって離職するのを食い止めることは、人材育成の観点から見ても効率的だ。

地銀人材バンクのような取り組みは、全国に拠点があることが大前提だが、実は一部の企業でも実施されている。たとえば、三菱化学は「女性活躍推進宣言」を掲げ、サポート制度として「勤務地自己申告制度」や「海外転勤同行休職制度」、「転勤一時見合わせ制度」などを設けている。

また、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)は、多様性に富んだ社員の個性を尊重する、という目的からフレックス制度や時間短縮勤務、在宅勤務などの制度を導入している。その結果、総合職の37%を女性が占めており、なかでも注目は課長相当職で32%、部長相当職でも24%の割合で女性が登用されている点だろう。

日本の民間企業における役職別管理職に占める女性の割合は、課長相当職で7.0%、部長相当職では4.2%となっているので、P&Gの取り組みがいかに特筆すべきかがおわかりいただけるだろう。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成22年度版より)

ただし、こうした三菱化学やP&Gのような事例はまだ一部の企業に限られているのが現実だ。

「地銀人材バンク」がこのような制度の普及の起爆剤になって多くの民間企業に取り入れられるようになれば、「働き方」の自由度が高まっていき、真の意味での豊かな社会が実現するのではないだろうか。大いに期待したいところだ。(提供: nezas

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