離婚,不動産,トラブル
(写真=PIXTA)

離婚につきもののトラブルには「不動産」に関わるものも少なくない。行政書士によれば、少し年上の世代、50−60歳代に多いようだが、10−20年後にそうならないように、ありがちな不動産トラブルの5例から学んでおきたい。

残りの住宅ローンの返済方法でもめる

離婚協議中の女性Aさんは、共同名義(夫50%・Aさん50%の持分)のマンションに住んでいるが、まだローンが5年程残っている。共同名義のため、残りのローンの支払い義務がAさんにも夫にもあるが、Aさんは離婚後、別の賃貸マンションに住む予定だ。こうした事情からAさんは、住んでもいないマンションのローンを支払い続けるのは納得できないと考えている。

一般に、夫婦が婚姻中に形成した財産(共有財産)は、離婚の際に夫婦で分けなければならない。具体的に共有財産は、夫婦で共同出資、あるいは持ち分を決めて購入した財産である。Aさんの場合、マンションの現価格の半分からAさんの負担すべき「残り5年分のローンの半額」を差し引いた額が、Aさんに分与される財産となる。Aさんは夫から、その財産に相当する金額を受け取ることになる。

財産分与で家の所有権は主張できるか悩む

専業主婦のBさんは、現在夫と離婚協議中だが、財産分与で悩んでいる。家(夫名義)は夫が結婚前にローンを組み、結婚期間中に完済した。Bさんは専業主婦だから、ローンは夫の給料で支払ったということになる。Bさんの悩みは「家は夫婦の共有財産になるのか?」と言うことだ。

夫がローンを組み、夫の給料で支払った住宅ローンではあるが、結婚期間中はBさんが家庭に入って夫を支えることで、完済できたと考えられる。家という財産を形成するのにBさんの貢献度があったと見るのである。結婚期間中に支払ったローンの半額についてはBさんの財産とみなされることになり、夫に財産分与を要求できることになる。

マンションの頭金として受けた親からの援助をどう考えるか

30年前に結婚した女性Cさんは現在離婚を考えている。結婚後に住宅ローンを組み、マンションを購入したが、既にローンは完済している。通常であれば、マンション価格の半額がCさんの財産となるのだが、困った問題が持ち上がった。それは結婚当初に夫の両親から「マンションの頭金に」と援助してもらった経緯があるのだ。

夫はこの頭金について「自分がもらったものだから、財産分与から除外するべきだ」と主張していて、マンション価格から頭金を除いた金額を折半すると主張している。

たしかに夫の両親は、現金を夫に贈ったものではあるが、ここで大事なことは使い道を指定したことである。もし何も言わずに夫にお金の援助をした場合には、両親から夫への贈与と判断できるが、「マンションの頭金」と言っている以上、夫婦に対する「マンション購入のための贈与」と判断される。この頭金を含めて夫婦の共有財産となり、マンションの全価格を折半すべきだろう。

ローンを負担するから慰謝料・養育費を減額してほしいという要求

離婚協議中の女性Dさんの悩みは複雑だ。現在夫と3歳の娘の3人で生活しているが、離婚後は娘の親権はDさんが持ち、別に賃貸マンションに引っ越す予定である。現在住んでいるマンションは、夫とDさんの共同名義であるが、まだ住宅ローンが10年も残っている。

夫は残りのローンを全額自分で負担する代わりに、Dさんに支払う慰謝料と養育費を減額して欲しいと言っている。Dさんとしては、ローンの負担からは免れるが、慰謝料や養育費を減額されるのは納得できないという。

財産分与には、清算的財産分与と慰謝料的財産分与とがある。清算的財産分与は、婚姻中に夫婦で作った財産を分けることで、基本的に折半する。一方、慰謝料的財産分与は、離婚の原因を作った配偶者が、相手方の精神的な損害に対して支払うものだ。この二つの財産分与は、まとめて精算できるとされている。

したがって、夫が残りのローンを負担する代わりに、慰謝料の減額はできることになる。但し養育費については、あくまでも子どもが親に請求できる権利であるため、夫婦の財産分与とは切り離して考えなくてはならない。従って、養育費についてはDさんと夫で協議を行い、財産分与とは別に支払額と支払期間を決めなければならない。

離婚しても同居を続けたい事情がある

協議離婚をしている女性Eさんは、夫と9歳の息子の3人暮らしだ。息子の親権はEさんが持ち、財産分与、慰謝料、養育費についても、夫と合意をしているが、一つ困った問題がある。小3の息子は自宅近くの小学校に通っているので、そのまま同じ小学校に通わせたいが、近くに適当な賃貸マンションがない。せめて息子が小学校を卒業するまでは、現在のマンション(夫名義)にそのまま住むことはできるのか、またそうなった場合には、財産分与はどうなるのかということである。

離婚後も同じ家に住み続ける夫婦は存在する。特に子どもが幼い場合、学校や養育のことを考えて、同居する夫婦も珍しくない。Eさんには、財産分与の手続き(婚姻中に形成した財産の折半)を行った上で、同居することで必要となる諸経費(水道光熱費など)や家賃代わりとして住宅ローンの一部を負担するという解決策もある。(ZUU online 編集部)