『その節約はキケンです-お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか』や『超ど素人がはじめる資産運用』など、数多くの初心者向けの金融系書籍を発表し、テレビや雑誌など多岐にわたるメディアで活躍中のファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん。世の中にはお金を貯めたとしても、そこから「ふやす」までには勇気が必要だと思う人もいるようです。そこで、風呂内さんから「ふやす」について、お考えをお聞きしました。

お金は守るだけではなく、「ふやす」のも大事!

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──お金を貯めることができても、資産運用を通じてふやすのは怖いという人もいるのではないでしょうか。お金を「ふやす」ことについて、風呂内さんのお考えを教えてください。

風呂内さん:誰しもが投資をしなければいけないと考えてはいませんが、挑戦したい人はお金を、使うお金、守るお金、ふやすお金の3つに分けてみると検討しやすくなります

使うお金というのは、生活費の3〜6ヵ月分に相当するお金です。そして、守るお金は5~10年のスパンで使う可能性のあるお金で、たとえば、教育費や住宅ローンの頭金などがこれに相当します。

そして、3つ目がふやすお金です。前述の2つのお金より上回った金額をそこに充てるのが健全な考え方です。一般的にはセカンドライフに係るお金はここに該当するといわれています。このお金を運用してみるのが理想といえます。

──貯めたお金を「守る」のではなく、なぜ「ふやす」必要があるのでしょうか?

風呂内さん:お金というのは、金額は一緒に見えたとしても、その価値はどうしても変わってしまいます。たとえば、1,000円でジュースを買おうと思ったとき、ジュースの値段が100円なら10本買えますが、150円になったら6本しか買えません。同じ1,000円を持っていても、10本と6本では生活のレベルが変わってしまうのは想像できますよね。つまり、お金というのはそのまま持っているだけでは、価値を守ることはできないんです。

では、どのように価値を守ればいいかとなったときに、一部を投資に回すと良いという考えになるんです。その一部の目安として考えるのは、先ほどお話した「ふやす」お金です。一般的には、価格変動の影響を受けてもいいお金をふやすお金だと表現します。

──今使うお金を投資でふやすという考えは、リスクが高いことと考えるべきでしょうか?

風呂内さん:はい。いいタイミングの判断が鈍りますね。投資は、安く買って高く売るというシンプルな仕組みなのですが、ずっと価格変動の影響を受けているお金なんですね。でも、今、必要な虎の子のお金を使ってしまった場合、いいタイミングなんて関係なく、今必要だからとすぐに持っている金融商品を売却しなければいけなくなります。価格が下がっていても、手放さないといけない局面があるかもしれません。

それを防ぐには、今は価格が下がっていたとしても、気長に、ゆくゆく上がるまで待てるくらいの余裕が必要です。長期で運用するつもりで投資を始めて、良い時があれば短期で売っても構わないと考えるとうまくいきやすいです。基本的には10年、20年というスパンで考える方が良いですね。もし、大幅に価格が上がっているとしたら一部売ってもいいでしょうけど。

運用初心者が投資を始める最適な時期は?また、少額投資をする意味とは?

──投資を始める適齢期はありますか?

風呂内さん:20代で始める方もいますが、非常に少数ですよね。というのも、20代は投資より前に貯蓄をするべき時期だと考えます。ただ、一般的には投資は長く運用していく方がリスクを減らせるといわれていますから、20代の若いうちからスタートすれば時間分散効果が得られやすいといえます。

逆に、やってはいけない運用の典型的なパターンは決まっています。たとえば、60歳で得た退職金を一気に運用に投じてしまうことです。今まで手にしたことのない金額を、今まで経験したことのない方法に充てるというのは非常にリスクが高まります。最悪の結果を招きかねないともいえますね。

それに対して20代はこれからまだまだ働いて給与を得る期間が長いので、もし運用に失敗したとしても給与で補うことが可能なんですね。また、今から始められるという人はとてもラッキーだと思います。売買単位が小さくなっているんです。最低投資金額(口数)がどんどん低くなっていて、100円から始めることも可能ですからね。もし、毎月3万円を預貯金にする余裕があるのなら、そのうちの1,000円だけ投資に回すという選択は間違っていないと思います。

──最初は、少額でも構わないということですね?

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風呂内さん:投資は金額でリスクをコントロールできることを知っておくのが大切です。投資に失敗して2度とやりたくないと考える人の多くが、一度に大金を投資して、それがなくなってしまったという人なんです。少額投資は一見地味ですが、持続することで良い結果に結びつくことが多いんです。派手なことをしているわけではないので、コツコツと続けられますし、20代で始めれば運用期間が長い分、良い結果を招きやすいといえます。少額投資の持続で時間を味方につけてリスク低減を目ざす運用は多くの人がチャレンジしやすいと思いますね。

──少額投資も非常に有効だということですね?

風呂内さん:少額投資をしやすい環境がどんどん整ってきましたので、初心者の方が始めやすい時期だと思います。投資が怖いと感じている人の特徴として、金額を見誤っているということが多いんです。投資のリスクコントロールの心臓部分である“金額”は自分で握っているのですから、海のものとも山のものとも知れないものに身を委ねているわけではないと理解することが大事です。

──少額投資といえば、NISA(少額投資非課税制度)も手段になりますか。

風呂内さん:そうですね。NISAやつみたてNISAは始めやすいと思います。他にもiDeCoも選択肢になるでしょう。せっかく資産運用を始めるのでしたら、税制優遇が受けられる方がいいのではないかと思いますから。

投資でお金をふやすことを考えると、難しいと感じたり、自分にとっては縁遠いと感じる人もいるかもしれませんが、自分の資産の価値を守る、あるいは維持するために資産運用をやっていく必要があると考えると、NISAやつみたてNISA、iDeCoなどのポイントを抑えておくのは一案だといえるでしょう。

──では、それぞれの利点を教えていただけますか?

風呂内さん:まずは、つみたてNISAについてご説明します。つみたてNISAの枠のなかで購入できるのは投資信託とETFのみです。それが大きな特徴ですね。現在は約150本の投資信託やETFのなかから銘柄を選択できます。ただし、選択できるのは長期・積立・分散投資に適した一定の銘柄に限られています。このなかから投資銘柄を決めなさいとレールを引いてもらって、そこに乗っかる形で運用をしたい人向けです。

そして、投資信託に加えて株式や株主優待がおもしろそうだという人はNISAがいいですね。こちらは自分で売買のタイミングを計りたいという人向けです。投資の知識が必要になりますので、初心者の方は、やはりつみたてNISAから始めることをおすすめします。

これはすべての金融商品にいえることですが、すべてを1つに兼ね備えるのは非常に難しいんですよ。これはパートナーに関しても同じで、歌もうまくて、いろんな情報を知っていて、安心もくれる男性ってなかなかいませんよね。それと同じです。

現金や預貯金は必要なときにすぐに使えるというメリットがあるのですが、残念ながらなかなかふえません。これらのことをよく考えて、お金の置き場所をどこにするのかをよく検討することが大切です。(提供:お金のキャンパス

風呂内 亜矢さん(ふろうち・あや)

ファイナンシャルプランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
26歳独身の時、貯金80万円しかもたずマンションを衝動買いしたことをきっかけに貯蓄、投資、お金の勉強を始める。現在は夫婦で4部屋のマンションを所有し、賃料収入も得ている。2013年独立。身近で親しみやすいお金の解説に定評があり、新聞、テレビ、ラジオなどで、情報発信を行っている。


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