ダブルインカムの夫婦が多いなか、夫婦ともどもキャリアも家庭も両立したいと考えるパワーカップルが増加しているといいます。一方、パワーカップルのお金の管理はそれぞれに任せがちになり、ライフイベントなどの節目に「お金がない!」と困ってしまうこともあるといいます。そこで、パワーカップルにフィットするお金の貯め方について、株式会社 Money&You取締役の高山一恵さんにお聞きします。

ライフスタイルの変化を見越した準備方法とは?

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――結婚生活を続けていくと、子ども、マイホーム、親の介護など、さまざまな生活様式の変化にともなって、出費が増えるのみならず、収入が大きくダウンする可能性があるなか、そういった変化を事前に見越し、どのような準備をしていったらいいのでしょうか。

高山さん:基本的には、口座を分けて管理するということです。同一口座に毎月、生活費の余りをとりあえずストックしておくというのでは、家計の状況を正しく把握することはできませんし、いつまで経ってもお金を貯めることができません。

意外と、冠婚葬祭や帰省に関わる出費だとか、その他の臨時支出のような、いわゆる“家計のブラックホール”の部分がばかにならず、そのたびに貯蓄を切り崩すというケースもあります。マイホーム資金、老後資金など目的別に口座を分けて管理するのが理想ですが、少なくとも、教育費だけは分けておきたいですよね。

できれば、お子さんが生まれる前から、長期的に貯めていったほうが良い。もし、お子さんが生まれなかったり、進学しなかったりという話になって、それが不要になったら、別な使い道にふりわければいいと思います。

子どもが大学に進学する場合、教育費として確保したい金額は、18歳までに500万円が目安です。数年前までは300万円といわれていましたが、大学院の進学や留学することなども考えると、500万円程度は確保したいですね。

最近では、教育ローンを利用しているご家庭も多いのですが、住宅ローンとダブルで重くのしかかってきますから、自分たちの老後資金が危ないですよね。ですから、老後費用もちゃんと専用の口座を用意してコツコツ貯めていくのがとても重要です。

――いずれにせよ、パワーカップルとしてのパワーがある時点から、それぞれの箱を用意して、少しずつ貯めていかないといけないということですね。

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そうです。パワーがあるときこそが、逆に貯め時なんですよね。だから、ふたりで稼いでいるときに、互いのお小遣いを確保したうえで、こういった口座=箱を用意しようと考えるべきなのです。

この「教育」「老後」「住宅」は“人生の三大資金”と呼ばれていて、昔は、給料が右肩で上がっていったし、十分なボーナスも支給されていたので、その三つのバランスが崩れても、どこかでリカバリーができるような、そんな時代でした。今は、このうちのどれか一つが足を引っ張ると、リカバリーどころか、全体的に足を引っ張られてしまう状況になっています。

――ちなみに、その箱の中身については、旦那様の収入と奥様の収入の、どちらをどのように割り振れば良いのでしょうか。

高山さん:理想は、両者の収入をミックスした“わが家家計”から捻出するのが理想です。あとは奥さんが教育費を担当するから、旦那さんは住宅費を担当というように、項目別担当制であってもいいかと思うのですが、もしも収入格差があるとしたら、少し不公平感が生まれるかもしれません。

そういった意味では、お小遣いは、毎月いくらと金額ベースで決めるのではなく、“手取り額の何%”みたいな基準で決めておいたほうがいいのではないでしょうか。給与が上昇したらお小遣いが増えるわけですし、仕事に対しても頑張りがいがでますよね。

将来のためには、投資による資産形成も必要?

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――やっぱり将来の家計を支えるために投資も必要だってことですね。

高山さん:そうですね。投資はやったほうがいいと考えています。それもパワーがあるときから始めていたほうがいいと思います。投資って、いろいろな方をみて思うのですが、結局、やればやるほどうまくなっていくのかなと思っていて、ダメになったときの対処の仕方とか、価格の変動にも慣れてきますよね。

投資のスキルがないままに、年を取ってから急に、大きな金額を投資するのは非常に危険ですよ。若いうちは失敗してもリカバリーがききますが、65歳になって大失敗したとなったらなかなかリカバリーはできません。また、貯めることもそうですが、使う技術も必要ですよね。節約ばかりではストレスで疲れてしまいます。豊かな人生を送るためには、ある程度上手にお金を使っていったほうが良いと思います。

――確かに、投資は、十分なパワーがある時点でトライしてみたほうがよさそうですね。

高山さん:そうですね。余力があるうちであれば、何事も前向きに考えられるのですけれど、ピンチに陥ってからでは、思考がどんどんマイナス方向に行くので、どういうわけか、連鎖的にマイナスなことを呼び込んでしまうような気がします。

投資資金はどこから出すのがいいの?家計から?夫婦それぞれ?

――ちなみに投資するときは、家計から捻出すべきなのでしょうか?

高山さん:もちろん夫婦それぞれ金額を出し合って合算投資でもよいですが、実は全部共有するより、ご夫婦が個々にお金を持っていたほうがいいという考えもあります。人生100年時代になって、途中で離婚する可能性だってなきにしもあらずですよね。特に奥さんに十分な収入があると、決断しやすいのかなと思います。

もちろん、離婚というネガティブな側面だけでなく、夫婦円満にしていくという意味でも、家計からではなく、自分のお金からプレゼントをあげたほうが良いですよね。なので、お互いに余力を持っているほうがいいのかなとは思います。秘密のへそくりではなく、お互いに、そういう余力を持っているということを理解しあっていたほうが夫婦円満になりやすいと思います。私はそれを“夫婦メンテナンス費”という名前をつけています。ときには夫婦だってメンテナンスが必要ですからね。

投資に関しては、夫婦共有でやるところと個別でやるところがあってもよいと個人的には思います。夫婦二人で投資のスタンスが違う場合も往々にしてあります。片方がイケイケで、片方が保守的みたいなカップルもいるので、スタンスが違ったまま、共通口座から投資をするとストレスになる可能性があります。だったらしっかり分けて投資したほうが良いですよね。

――お互い経済的に自立しつつ、そしてリスペクトしあうみたいな関係ですね。それが夫婦円満の秘訣かもしれませんね。

高山さん:お金の話をよくする方が夫婦円満になるという話もあります。夫婦が円満であり続けるには、家計の管理はとても重要かもしれません。結局、自分たちのライフプランのビジョンにも関わるので、話せるか話せないかの差は、けっこう大きいと思います。

また、近年は離婚も増えていますから、ある程度はお互いに自立をしておくことが重要で、そういう夫婦の方がお互いに“いつ離婚されるか?”と緊張感があるから、お互いに配慮して、円満という話もあるようです(笑)。

離婚原因の上位は、いつの時代もお金の問題か異性関係ですから。お金があるときはいいけれど、なくなると疲弊しますからね。そうならないためにも準備は必要ですね。(提供:お金のキャンパス

高山 一恵さん(たかやま・かずえ)
株式会社Money&You取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&You(http://moneyandyou.jp/)の取締役へ就任。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。

女性向け、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる『FP Café ®』(https://fpcafe.jp/ )を運営。
「東洋経済オンライン」「All About」「Woman Type」「ZUU Online」「OTONA SALONE」等のウェブ媒体での連載、「プレジデントウーマン」「日経ウーマン」「Oggi」「FRaU」などの女性誌にも多数出演。
主な著書に「金融機関が教えたがらない年利20%の最強マネー術」(河出書房新社)、「税金を減らしてお金持ちになるすごい方法」(河出書房新社)「一番わかる確定拠出年金の基本のき」(スタンダーズ)「パートナーに左右されない自分軸足マネープラン」(日本法令)、「やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)などお金の分野での著書は数十冊に及ぶ。


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