人口知能
(写真=PIXTA)

人工知能という言葉は、一昔前に最先端技術としてメディアなどで盛んに取り上げられていたが、最近あまり騒がれなくなったのは、すでに多くの分野で実用化されているからだろう。学術分野でこの言葉が初めて登場したのは今からちょうど60年前の1956年と言われるが、広く世に知られるきっかけに、1968年に公開されたSF映画「2001年宇宙の旅」(原題は「2001: A Space Odyssey」)の影響がうかがえる。

多くの分野で実用化が進む

そのあらすじは、木星探査の有人宇宙船ディスカバリー号に搭載された高度なコンピュータHAL9000が、人間の乗員に知らされていないミッション遂行の際に異常をきたし、乗員を殺そうとするというものだった。そのショッキングなストーリーが話題を呼んだ。このHALという名前はコンピュータ技術の当時の最高峰、米IBMのさらに先を行くという意味で、アルファベットの1つ前の文字を連ねたものであった。

映画では人工知能が人間のごとく振る舞う姿を描いているが、現在応用が進むのは、周囲の環境や、蓄積された多くの情報を基に最も合理的に判断するようシミュレートされたものだ。機能の限られたものは以前からエアコンなどの家電に組み込まれていたが、最近では対話するスマートフォンやロボット、そして車の自動運転などで高度な人工知能が使われている。

これを支えるのは、演算速度が飛躍的に上がったLSIや、無数の情報を蓄積するビッグデータ、インターネットを広く活用するクラウド・コンピューティング、そして人間の能力を一部超える知覚センサーといった技術の進歩である。

人工知能で不動産投資家向けや物件検索サービス

人工知能を活用する動きが、従来ローテクと見られていた不動産業界で広がりつつあり、不動産とITとの融合「Real Estate Tech(リアルエステートテック)」に注目が集まっている。

不動産価格はこれまで、周辺環境や同様の物件など、おおざっぱな情報から仲介業者が勘や経験を頼りにはじき出していた。しかし今、人工知能を使って適正価格を割り出す、という方法が確立されようとしている。人工知能を活用すれば、過去の売買履歴の情報や、その時点の金利、公示地価などを基に、極めて妥当な価格を算出することができる。

月定額利用料がかかる場合があるが、不動産価格が妥当で取引コストがかなり安くなる点は、不動産投資や売却を考えている人には朗報である。少額でも不動産投資を可能にしたクラウドファンディングとともに、不動産の取引を活発化させ、これまでの難点だった流動性の低さも大きく改善されそうだ。

「住まい」×「IT」で人工知能が見守る社会

一方、人工知能を住宅やオフィスなどの居住空間に導入する動きも見受けられる。最近盛んに研究開発が行われているインテリジェント住宅やインテリジェントオフィスがその例だ。いたるところに配置した圧力、温度、赤外線などのセンサーを通じて、人工知能が人の動きを感知・記録し、室内環境を快適に管理する。万が一、異常を検知した場合は居住者に知らせ、必要であれば消防や警察などに通報するという仕組みだ。

特に住宅では、「見守り役」を果たすという点においても期待されている。人工知能が一人暮らしをする高齢者や家族が留守中の子供や病人の見守りをし、もし異常があった場合、管理会社や家族に連絡が届く。また、居住者の位置情報を人工知能が取得して冷暖房のオンオフや風呂の準備を行うだけではなく、食事をきちんと摂ったのか、薬は服用しているのかのアラームなど、生活に密に寄り添ったサポートも可能だ。そのため、介護の分野での注目度は高まっている。このような住宅の実現に注力する関連企業や機器メーカーも、株式投資の観点では魅力的かもしれない。

不動産分野で人工知能の活用が進み、さらにサービスと連携するようになれば、最適な地域環境を目指すスマートシティーの実現に大きく近づくだろう。今後のリアルエステートテック市場から目が離せない。(提供: Vortex online

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