スマートベータのパフォーマンス
◆スマートベータとは
スマートベータとは株式指数の一種です。年金基金などでベンチマーク(パフォーマンスの基準)に用いられる時価総額加重型の株式指数とは異なり、株式市場で堅調なパフォーマンスが見込まれる銘柄の特徴(ファクターといいます)に着目した指数です。
見込み違いではなく、ファクターが本当にスマートであれば、スマートベータは時価総額加重型の株式指数を上回るパフォーマンスが期待できます。また、スマートベータを活用した運用は指数の値動きを再現する単純明快な運用となるため、低コストで実現できることもスマートベータの魅力の一つです。
近年、機関投資家の間でアクティブ運用の代替として、スマートベータを活用する気運が高まっています。アクティブ運用とは、ベンチマークを上回ることを目指した通常の運用のことです。
スマートベータへの関心が高まっている背景には、「アクティブ運用のパフォーマンスの大部分が、スマートベータを用いれば低コストで再現できる」との考えが出てきたことがあります。
実際にノルウェー政府年金基金が採用したアクティブ運用の超過リターン(ベンチマークを上回った部分の収益)の7割が、一般的なファクターの効果によって説明できたとの報告もありました。
本稿では、6本の単一ファクター指数をスマートベータとして取り上げます【図表1】。MSCIから公表されている指数で、割安株、小型株、モメンタム株、低リスク株、高クオリティ株、高配当株のパフォーマンスを集約したものです。
◆安定感を欠くパフォーマンス
6本のファクター指数のパフォーマンスを確認しましょう。日本株式は配当込みTOPIX、外国株式はMSCIコクサイをベンチマークとして、超過リターンでパフォーマンスを見ます。過去14年間通して見ると、多くのファクター指数がベンチマークを上回るリターンを日本株式、外国株式双方で上げていました【図表2】。
日本株式では、「バリュー」「等ウェイト」「低リスク」「高配当」の4指数が、配当込みTOPIXを上回るパフォーマンスを上げていました【図表2:左】。
特に「バリュー」と「等ウェイト」は、比較的安定して右肩上がりのグラフでした。しかし、「バリュー」は2010年以降、低下傾向にあります。「等ウェイト」についても2005~2007年にかけては横ばい、もしくはやや軟調に推移していました。
また、「モメンタム」「クオリティ」の2指数については、14年間通して見ると配当込みTOPIXを下回りました。「モメンタム」「クオリティ」ともリーマン・ショック後の2009年以降は、グラフは緩やかながら上昇に転じており、足元では超過リターンを獲得していました。
外国株式では、6本全てがMSCIコクサイを上回るリターンを上げていました【図表2:右】。ただ、全期間通して見ると超過リターンを獲得していましたが、どの指数もグラフの推移は大きく下落している期間があり、パフォーマンスは不安定でした。
日本株式、外国株式ともに、長期的に見ると超過リターンを獲得している指数はありましたが、安定して常にベンチマークを上回っていた指数がなかったことが分かります。
◆年ごとにパフォーマンスは浮き沈みする
ファクター指数のパフォーマンスの変動を詳しく見るため、年ごとのパフォーマンスの推移を見ましょう【図表3】。
それぞれの指数の最悪だった年の超過リターンを見ると、日本株式、外国株式ともにマイナスとなっており、全ての指数がベンチマークを下回っている年がありました。一方で年ごとに見ると、全ての指数が一斉に下回った年はなく、ベンチマークを上回る指数が毎年あったことが分かります。
ただし、高パフォーマンスの指数は年ごとで入れ替わっていました。指数間でパフォーマンスが最高だったファクター指数が2年以上続いたのは、日本株式、外国株式ともに1回だけでした(2002~2004年の日本株式「バリュー」と2009、2010年の外国株式「等ウェイト」)。