起業
(写真=PIXTA)

事業の経営者になるための方法としては、親の事業を継ぐ、自分で会社を起こす、副業として個人事業を営むなど、複数の選択肢が考えられます。ここではサラリーマンからの起業に焦点を当てて、知っているだけで得をする起業時の節税ポイントを見ていきます。

「個人事業」と「法人設立」の選択

個人事業とするか法人を設立するかによって、税金は大きく変わってきます。課税対象の違い、税率の違い、経費の違いの3つについて解説します。

個人事業の場合、事業は個人と一体とされ、収益に対して全て所得税がかかります。法人の場合は、自分に払った役員報酬に対してのみ所得税がかかり、役員報酬を含む経費を差し引いた収益に対して法人税がかかります。課税対象が全く異なるのです。

そこでポイントになるのは税率です。所得税率は所得額に応じて5%から最大45%になります。法人税率は利益800万円までは20%前半、それ以上は約30%です。利益が多いほど法人の方が税率は有利になりますが、法人に残った利益は個人のものではありませんので、配当金として受領することになります。配当金には約20%の税率がかかり、いわゆる二重課税が発生します。法人の利益は配当ではなく法人に再投資することが多いため、最初は個人事業で、利益が増えたら法人化するのが一般的です。利益の見通しによって、個人事業と法人の有利判定が必要です。

また、経費として計上できる範囲は法人の方が広いです。例えば、個人事業の場合、事業が一体であるため「自ら所有する不動産を自分に貸す」ことはできません。そのため、家賃を経費とすることはできませんし、生命保険料も経費になりません。一方で法人であればどちらも経費となります。家族への給与も法人の方が柔軟です。ただし交際費は法人には上限額があるものの個人にはないなど、個人の方が有利であることもあります。

まとめますと、個人事業とする方が経費の範囲は狭いものの、利益が少ないうちは税率が低いため有利です。利益が増えたら法人化し、経費給与に対して所得税、種々の経費を計上した後の利益に対して法人税を払います。今後の利益見込みによって判断しますので、税理士等の専門家に都度ご相談の上意思決定することになります。

地方税と登録免許税の節税

法人化すると「均等割」という地方税がかかります。これは個人事業にはかかりません。設立の際は月割りで発生します。例えば均等割が7万円で12月31日を期末とする場合、設立が3月1日であれば、3月~12月の10か月分の5万8300円となります。ここで初年度の均等割を抑えるには、設立日を「きりの悪い日」にすることです。1か月に満たない日数は切り捨てとなるため、上記例で設立日を3月2日にした場合、3月分は1か月に満たず切り捨てられ、4月~12月の9か月分の5万2500円に減らすことができます。

また、法人の場合で増資を考えている場合、増資には登録免許税がかかります。少額の資本金でも法人設立は可能ですが、最低でも15万円かかり資本金2000万円強まで同額です。設立時と増資時の資本金額を検討することで登録免許税の節税ができる可能性があります。

消費税の還付を狙うために

消費税は資本金が少額であれば事業開始当初は免税になります。しかし、初期経費が嵩む場合や固定資産の購入がある場合、通常であれば経費や資産に係る消費税が還付されるはずが、消費税免税となっているために還付されない場合があります。そこで免税ではなく、あえて「課税事業者」を選択する旨を税務署に提出すれば消費税還付が受けられ得をします。ただし場合によっては逆に支払いが発生しますので、慎重な判断が必要です。

起業当初の選択が重要

個人事業と法人設立で課税対象や有利不利が異なる点はお分かり頂けましたでしょうか。その他にも、地方税や登録免許税、消費税などでも起業当初の経営者の選択によって、有利な場合と不利な場合があります。知ってさえいれば節税できるケースもありますので、起業時は税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。(提供: TRUSTAX

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