東南アジアの電子マネー市場が特に成長が著しい。2015年のASEAN10カ国の電子マネー年間利用総額は約2兆ドル。10カ国の合計でもまだ日本の3分の2程度の規模である。しかし2020年の予測数値をみてみると、日本は横ばいであるのに対し、ASEANは成長して3兆ドルと、たった5年で日本に追いつく見込みなのだ。

特に市場規模が大きいインドネシア、タイ、フィリピンが2010年から2015年のASEAN電子マネー市場の成長を押し上げてきた。

5年で日本に追いつく急成長

インドネシアは10カ国の中でも群を抜いて人口が多く、約2億5000万人(GDP約8885億ドル)の国である。人口だけを見ても日本の約2倍の市場規模があり、電子マネー普及のための法整備やネットワークシステムなどの環境整備も進んでいる。都市部を中心にATMやカード決済が普及し、VisaやMaster Cardなどのカードも普及し始めている。

タイの人口は日本の半分ほどであるが、交通乗車券Rabbitなどがバンコクを中心に普及し、現地のセブンイレブンも非接触IC電子マネーSmart Purseを発行する等利用環境が整い始めている。フィリピンは携帯電話会社が電子マネーをけん引している。金融インフラよりも携帯電話が普及しているため、SMS(ショートメッセージサービス)を活用した、利用者間で送金可能な日本ではまだ珍しいサービスも存在する。

今後2020年までの伸び率が高いと言われているのがベトナム、カンボジア、インドネシアである。中でもベトナムは、電子マネーの普及に関しては前述の3カ国と比べるとまだまだ決済金額は少ないが、米ゴールドマン・サックス証券と英スタンダードチャータード銀行から計約2800ドルの融資を受けた電子マネー会社もあり、今後の伸びが期待される。

成長余力はASEAN随一 インドネシア

過去5年間、東南アジアの電子マネー市場で一番伸びているのがインドネシア。2005年から10年のわずか5年間で電子マネー市場が約2倍になっており、15年から20年も右肩上がりでの急成長が予想されている。

インドネシアには既に日系企業も多数参入している。NTTデータは国内最大手通信キャリアと共同で、近距離無線通信技術の実証実験に成功しており、これを利用したモバイル決済の商業化で、現地事業者を引き続きサポートする。

クレジットカード大手のJCBは国内の大手銀行6行、ATM2社と提携しており、VISAやMasterCardについで、カバー率は9割ほどまで高まってきている。クレディセゾン <8253> はセブン-イレブンインドネシアと合弁会社を設立し、プリペイド電子マネー・ポイントの共同展開、拡大するフランチャイズに合わせて設備リースなどを計画している。特にフランチャイズに関しては2015年の約200店舗から、10年後には約2000店舗まで10倍に拡大させる計画であり、そこに事業を展開できるのは大きい。

日本のように子どもから高齢者まで電子マネーがインドネシアに普及するまで、そう時間はかからないかもしれない。2020年、日本に追いつきさらに成長していくであろうASEANの電子マネー市場、またインドネシアから目が離せない。(ZUU online編集部)